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海外テニス

【雑草プロの世界転戦記31】前に強く振れればいい!「結果」よりも「プロセス」を見るヨーロッパの指導<SMASH>

市川誠一郎

2025.05.04

力強いボールが飛ばせていれば、結果にはこだわらないヨーロッパの指導。だから形を気にせずシンプルに前に振ることを学びやすい。※写真と記事内容は関係ありません。(C)Getty Images

力強いボールが飛ばせていれば、結果にはこだわらないヨーロッパの指導。だから形を気にせずシンプルに前に振ることを学びやすい。※写真と記事内容は関係ありません。(C)Getty Images

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF(国際テニス連盟)大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情や、ヨーロッパのテニス環境を綴る転戦記。

―――◆―――◆―――

 ヨーロッパと日本では、指導法やテニスの考え方にどんな違いがあるのか? 今回も引き続きそれについて綴りたいと思います。

 戦術や戦い方はテニスの本質ですが、プロのレベルになってくれば、パワーとスピードが全盛の現代テニスにおいて「ボールの出力」は非常に重要です。

 海外を転々としていると、日本人選手にはフォアハンドをしっかり強く打てない人が結構多いと感じます。これは、砂入り人工芝というコートサーフェスでのプレーが多いことも大きな理由ですが、日本と海外の指導の違いも背景にあると感じています。

 前回書いた通り、海外では細かいフォームの指導がありません。もっといえば、幼少期は「しっかり力強いボールを飛ばせている」という「プロセス」を重視してくれる指導環境が多いです。

 日本では、フォームや形の指導が細かい割に、そのフォームで打ったボールがコートに入らなかったという結果に対して、ミスをとがめがちです。指導の初期から「プロセス」より「結果」、特に失敗に目を光らせる指導が目立ちます。
 
 動作作りを目指しているのか、コートに入れることを目指しているのか、目的がはっきりしない上、ジュニア初期からミスしないことを目指すと、ミスを恐れて基本であるしっかりとした強いスイングをしなくなる弊害が生まれます。ただ入れにいくスイングをしてしまう選手が非常に多くなりやすいのです。

 日本人は特にフォアハンドでイップスの症状を経験した選手が、他の国に比べてとても多いと感じます。それもこうした指導の考え方が原因にあるでしょう。

 海外の指導は内容やプロセスをきちんと評価するのが主流です。動作作りをしている練習なら、しっかり前に振れていればアウトしていてもオーケー。出力を高める練習なら、強いボールが打てていればオーケー。ネットを越えるボールを打とうとしているなら、ネットミスでなければオーケー、といった具合です。

 前に強くしっかり振る――という明確な指導を行なうため、初期の選手がシンプルにボールを飛ばすことを習得しやすいと言えます。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

【画像】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景

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【画像】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのジュニア大会情景集
 

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