連日熱戦が繰り広げられているテニス四大大会「ウインブルドン」(6月30日~7月13日/イギリス・ロンドン/芝コート)。1877年の初開催から148年を迎える今年の大会から全てのコートで線審を廃止し、電子判定が全面的に導入されたのは既報の通りだ。
しかし長きにわたり伝統と歴史を重んじてきた“テニスの聖地”での電子判定導入に対する選手の反応は、全体的にあまり好意的ではないという。『UBITENNIS』など複数の海外メディアによれば、男子のジャック・ドレイパー(イギリス/世界ランキング4位)とベン・シェルトン(アメリカ/同10位)は電子判定を「100%正確とは言えない」と評し、女子のエマ・ラドゥカヌ(イギリス/同40位)も「あてにはできないと思う」と苦言を呈したとのことだ。
そうした中、現地7月6日に行なわれたアナスタシア・パブリチェンコワ(ロシア/元11位/現50位)とソナイ・カルタル(イギリス/同51位)による女子シングルス4回戦で起きた電子判定の誤作動が物議を醸している。
4-4で迎えた第1セット第9ゲーム、パブリチェンコワのゲームポイントで、カルタルが放ったフォアハンドは明らかにロングアウトしたように見えた。しかしこれに電子判定が反応せず、主審自らが「ストップ」とポイントを停止。その後主審は「電子システムが正しく作動しなかった」としてポイントのやり直しを指示し、試合は再開された。
本来ならばサービスキープできていたはずのパブリチェンコワは再開後にブレークを献上。チェンジエンドでパブリチェンコワは理不尽な判定に怒りをあらわにし、「今のゲームは私が取るはずだったのに、不可解な判定で奪われたようなもの」と強い口調で主審に訴えたという。
それでも何とか平常心を保ったパブリチェンコワはカルタルのサービング・フォー・ザ・セットとなった直後の第10ゲームで起死回生のブレークバックに成功し、タイブレークを制して7-6(3)で第1セットを獲得。続く第2セットも6-4で奪い、2016年以来9年ぶりとなるウインブルドンベスト8進出を果たした。
しかし試合後の記者会見でもパブリチェンコワは問題のシーンについて納得がいっていない様子だった。カルタルのショットの行方を見ていたはずの主審に対する不満をこう口にしている。
「主審には違う判断を期待していたし、もう少し判定の主導権を持ってくれるだろうと思っていた。主審があそこに座っているのはそのためでもあるはずだし、実際彼もショットの行方を見ていたと試合後に言っていたのよ。でも結局、主審は何もせずに、“ポイントのやり直し”とだけ告げた。彼女(カルタル)が地元選手だからそういう対応をしたのかはわからないけど、特異な状況だった」
今回の出来事は、電子判定を活用する中でも柔軟な対応が求められる場面もあるという現実を浮き彫りにした。願わくはテクノロジーと人間の判断がうまく調和し、より良い競技環境が築かれていくことを期待したい。
文●中村光佑
【画像】パブリチェンコワはじめ、2025ウインブルドンを戦う女子トップ選手たちの厳選フォト
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そうした中、現地7月6日に行なわれたアナスタシア・パブリチェンコワ(ロシア/元11位/現50位)とソナイ・カルタル(イギリス/同51位)による女子シングルス4回戦で起きた電子判定の誤作動が物議を醸している。
4-4で迎えた第1セット第9ゲーム、パブリチェンコワのゲームポイントで、カルタルが放ったフォアハンドは明らかにロングアウトしたように見えた。しかしこれに電子判定が反応せず、主審自らが「ストップ」とポイントを停止。その後主審は「電子システムが正しく作動しなかった」としてポイントのやり直しを指示し、試合は再開された。
本来ならばサービスキープできていたはずのパブリチェンコワは再開後にブレークを献上。チェンジエンドでパブリチェンコワは理不尽な判定に怒りをあらわにし、「今のゲームは私が取るはずだったのに、不可解な判定で奪われたようなもの」と強い口調で主審に訴えたという。
それでも何とか平常心を保ったパブリチェンコワはカルタルのサービング・フォー・ザ・セットとなった直後の第10ゲームで起死回生のブレークバックに成功し、タイブレークを制して7-6(3)で第1セットを獲得。続く第2セットも6-4で奪い、2016年以来9年ぶりとなるウインブルドンベスト8進出を果たした。
しかし試合後の記者会見でもパブリチェンコワは問題のシーンについて納得がいっていない様子だった。カルタルのショットの行方を見ていたはずの主審に対する不満をこう口にしている。
「主審には違う判断を期待していたし、もう少し判定の主導権を持ってくれるだろうと思っていた。主審があそこに座っているのはそのためでもあるはずだし、実際彼もショットの行方を見ていたと試合後に言っていたのよ。でも結局、主審は何もせずに、“ポイントのやり直し”とだけ告げた。彼女(カルタル)が地元選手だからそういう対応をしたのかはわからないけど、特異な状況だった」
今回の出来事は、電子判定を活用する中でも柔軟な対応が求められる場面もあるという現実を浮き彫りにした。願わくはテクノロジーと人間の判断がうまく調和し、より良い競技環境が築かれていくことを期待したい。
文●中村光佑
【画像】パブリチェンコワはじめ、2025ウインブルドンを戦う女子トップ選手たちの厳選フォト
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