並んで小ぶりのフィリピン国旗を手にする3人組は、以前からの友人。最も日本滞在歴の浅いカルロさんは大のテニスファンで、「1カ月前にはここで錦織圭の引退試合も見ていた」ほどだ。テニス情報もつぶさに追っているカルロさんは、「アレックスが13歳でラファ・ナダルアカデミーに行った時に、彼女のことを知った」という。
「フィリピンでは大統領派と副大統領派が対立していて、国民も政治的には分断されている。でもアレックスのことは、誰もが応援している。彼女は統一と友好のシンボルでもある」
カルロさんがそう言えば、友人のギルバートさんは「アレックスの英語にはフィリピンアクセントがある。タガログ語も話すので、とても親近感が持てる」と続けた。
そして皆が声を揃えるのは、「アレックスはいつも諦めずに一生懸命戦うから、応援したくなる」ということだった。
3回戦の対ディアナ・シュナイダー戦で、イーラはそれらファンの言葉を証明した。22歳で13位のシュナイダーもまた、台頭する新世代の1人。左利きという点も、イーラと同じである。
果たして2人のレフティーの一戦は、まるでボクシングのような激しい打ち合いとなった。フックパンチのようなクロスショットで相手の体勢を崩すと、オープンコートに迷いなくストレートを叩き込む。
恐れがない。下がらない。諦めない。
コートを縦横に走り、声を上げて強打を打ち込む2人のアスリートの姿に、見る者たちは引き込まれた。第1セットはイーラが6-2で取るも、内容はスコアほどの差はない。第2セットは、互いにブレークチャンスがありながらも取り切れない攻防の末に、シュナイダーがもぎ取った。
ファイナルセットは互いに体力の限界に近いなか、最後に少しの差を生んだのはサービス力だったろう。そのことを証明するように、激闘に終止符を打ったのは、センターに叩き込まれるシュナイダーのサービスエース。2時間52分、最終スコアは6-2、6-7(5)、4-6だった。
ファンの大歓声に応え、手を振りながらコートを去ったイーラは、その20分後には会見室に姿を現した。
「素晴らしい戦いだった。非常に高いレベルの試合だったと思う。負けはしたけれど、自分を誇らしく思う。どんな結果であれ、これだけのファンの前でプレーできたことは光栄なこと」
顔を上げ、凛として彼女は言う。
彼女が向かう先には、かつてない光景が広がる。そして足跡そのものが、新たな歴史となる。
取材・文●内田暁
【画像】イーラほか、東レPPO準々決勝で熱戦を繰り広げた女子選手の厳選フォトギャラリー
【関連記事】アジア大会出場のイーラに、懸念されていたWTA制裁措置は科されず! フィリピン協会が報告<SMASH>
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「フィリピンでは大統領派と副大統領派が対立していて、国民も政治的には分断されている。でもアレックスのことは、誰もが応援している。彼女は統一と友好のシンボルでもある」
カルロさんがそう言えば、友人のギルバートさんは「アレックスの英語にはフィリピンアクセントがある。タガログ語も話すので、とても親近感が持てる」と続けた。
そして皆が声を揃えるのは、「アレックスはいつも諦めずに一生懸命戦うから、応援したくなる」ということだった。
3回戦の対ディアナ・シュナイダー戦で、イーラはそれらファンの言葉を証明した。22歳で13位のシュナイダーもまた、台頭する新世代の1人。左利きという点も、イーラと同じである。
果たして2人のレフティーの一戦は、まるでボクシングのような激しい打ち合いとなった。フックパンチのようなクロスショットで相手の体勢を崩すと、オープンコートに迷いなくストレートを叩き込む。
恐れがない。下がらない。諦めない。
コートを縦横に走り、声を上げて強打を打ち込む2人のアスリートの姿に、見る者たちは引き込まれた。第1セットはイーラが6-2で取るも、内容はスコアほどの差はない。第2セットは、互いにブレークチャンスがありながらも取り切れない攻防の末に、シュナイダーがもぎ取った。
ファイナルセットは互いに体力の限界に近いなか、最後に少しの差を生んだのはサービス力だったろう。そのことを証明するように、激闘に終止符を打ったのは、センターに叩き込まれるシュナイダーのサービスエース。2時間52分、最終スコアは6-2、6-7(5)、4-6だった。
ファンの大歓声に応え、手を振りながらコートを去ったイーラは、その20分後には会見室に姿を現した。
「素晴らしい戦いだった。非常に高いレベルの試合だったと思う。負けはしたけれど、自分を誇らしく思う。どんな結果であれ、これだけのファンの前でプレーできたことは光栄なこと」
顔を上げ、凛として彼女は言う。
彼女が向かう先には、かつてない光景が広がる。そして足跡そのものが、新たな歴史となる。
取材・文●内田暁
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