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国内テニス

「テニス選手の帰れる場所に…」元トッププロの中村藍子らが“世界を視野に入れた”アカデミーを兵庫に新設【国内テニス】

内田暁

2020.05.12

現役時代はホームの大切さを痛感しただけに、今度は後輩たちに“帰る場所”を築こうと考えるようになった(写真は全豪3回戦進出を果たした2006年当時)。写真:THE DIGEST写真部

現役時代はホームの大切さを痛感しただけに、今度は後輩たちに“帰る場所”を築こうと考えるようになった(写真は全豪3回戦進出を果たした2006年当時)。写真:THE DIGEST写真部

 ならば自らが、選手たちにとっての「ホーム」になろうと志すも、そもそもハードコートが絶対的に少ない。その少ない場をようやく見つけても、選手を指導するとなると「やめて欲しい」と言われることがほとんどだ。

 私営・公営問わず多くのテニスコートでは、すでに他のスクールやコーチたちが、レッスンを行なっている。そこに新規参入しようとする者には、縄張り争い的な拒絶感が張り巡らされた。

 かくして八方塞がりとなった中村たちは、ほぼ面識はないながらも、兵庫県西宮市にある会員制テニスクラブ『香枦園』に飛び込む。ここにはハードコートが2面あり、自宅からも近い。中村にとってはジュニア時代に、幾度か試合をした場所でもあった。

 そのクラブを訪れ、支配人を前にして中村と古賀が語ったのは、選手あるいは指導者として胸の内で育ててきた、日本テニス界への提言的な希望と“世界”への想いである。

 これまでにも中村は、悩んでいる選手の姿に「こういう環境があればな」「こんな助言をしてあげたいな」と思うことが多くあった。古賀にしてみても、コーチと選手の関係性を見て「あんな言い方をしたら選手が萎縮してしまう」と胸を痛めたことは一度や二度ではない。

 ただ2人が目にしたそれらの事象は、「世界」という視座を共有するからこそ見えた景色である。そして彼らが見る景色は、立ち位置が変われば、視界の端にすら掛からぬ異世界だ。

 ところが中村たちが見定めるその地点を、香枦園テニスクラブの支配人も見ていた。
 
「お2人の考えに賛同します。関西でテニスを盛り上げたいという思いもある。コートはあるので、好きなように使ってください」

 その言葉が号砲となり、中村と古賀の想いは『Ai Love All Tennis Academy』として、この3月に産声をあげた。第一期生は、以前にも古賀がコーチを務めた今西美晴と、4月に18歳の誕生日を迎えた今村咲。

 なお、香枦園テニスクラブが中村たちの理念に賛同した背景には、園田学園出身の伊達公子に浅越しのぶや、西宮市出身の沢松奈生子らが世界に羽ばたく姿を、身近に感じてきたことが大きいという。
 
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