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海外テニス

過去を置き去りにして、次に進む。38歳、戦うレジェンドフェデラーの負けざまの美学とは?

内田暁

2019.09.05

優勝候補から一転、準々決勝で敗退するもその美しすぎる負けざまにファンたちも万雷の拍手を送った。写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

優勝候補から一転、準々決勝で敗退するもその美しすぎる負けざまにファンたちも万雷の拍手を送った。写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

 会見で淡々と質問に応じるフェデラーは、「38歳でも、グランドスラムで優勝できると思うか?」と問われた時、一瞬影が顔をよぎるも、すぐに笑みを浮かべて、こう応じた

「わからないよ。僕は水晶玉を持ってないからね。あなたは、どう思う?」
 わからない――記者のその返事を聞くと、「そのとおり」とフェデラーは言う。

「誰にも、それはわからない。もちろん、取れればいいと思っているよ。今はがっかりしているが、それでもここまでは良いシーズンだった。僕は大丈夫、すぐに立ち直るさ」。
 
 あるいは、先のウインブルドン決勝の惜敗が尾を引いているのかという問いも、彼は言下に否定する。
「それはない。先に進む限り、全ては過去になるからね」。
 
 フェデラーの「次に進む力」が発揮されるのは、試合の中だけではない。敗戦の痛みを受け止め、その上で前に進み、失意ともども過去とする――。

 それが、フェデラーが“G.O.A.T. (Greatest Of All Time)”であるゆえんだ。

取材・文●内田暁
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