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国内テニス

それは運命だったのか――。東レPPO初優勝の大坂なおみが願った「3度目のおまじない」とは…

内田暁

2019.09.23

大坂を常に全力で支え続けてきた「チーム大坂」の面々。後列右から2人目は母・環さん。同3人目は今大会ではコーチ役も務めた父・レオナルドさん。(C)Getty Images

大坂を常に全力で支え続けてきた「チーム大坂」の面々。後列右から2人目は母・環さん。同3人目は今大会ではコーチ役も務めた父・レオナルドさん。(C)Getty Images

「去年よりも、色んなことに感謝できるようになった」という21歳は、この1年の自身の成長を、次のように述懐した。「去年決勝に出た時は、あれほどのメディアの注目を受けたことがなかったので、それがプレーにも影響した。でも今年は注目にも慣れていたので、テニスに集中できるようになった」。

 世界1位として、あるいはディフェンディングチャンピオンとして、行く先々の町で注目を浴びてきたこの8カ月。それらの視線に真摯に向き合ってきた彼女だからこそ、誰もが優勝を期待する生まれ故郷の大会で、平常心を保つことができたのだ。

 また精神面のみならずプレーでも、経験が大きく生きたと言った。
 例えば、強風下でのプレーもそのひとつ。台風が接近するこの日の大阪市は朝から強風が吹きすさび、パブリチェンコワは自分の力を十二分に発揮できなかったと悔いた。

 対して、朝のウォームアップの時点で強風を覚悟した大坂は、「私はこれまで、もっと酷い風の中でもプレーしたことがある。大丈夫」と自分に言い聞かせたという。そして、自らのプレーを「風に向かっていった」と、彼女特有の言い回しで表現した。確かに彼女は逆風にも逃げず、立ち向かうことで、勝利をつかみ取ったのだろう。

「日本でのこの勝利が、特に大阪での勝利は、どれだけの価値を持つのか」――?

 優勝後の記者会見でそう問われた大坂は、「とっても大きな意味がある」と即答した。

「これまで起きた色んなことが、ここで全て良い形で結合した感じ。この大会で2度決勝で負けていたこと、それに今年のシーズンのことや、ここ数カ月の苦しんだ時期や……」

 ここまで言うと、彼女はフッと笑いを吐き出し相好を崩すと、「ちょっぴり、運命的なものを感じているの」と口にした。

 今大会を迎えるにあたり大坂は、「自らの原点に戻りたい」と、約半年師事したコーチと離別し父親をコーチにした。この大会が大阪市で開催されるのは、おそらくは有明テニスの森がオリンピックに向け改修中の、今年限りのことだろう。

 彼女が願った、3度目の、おまじない――。それはまるで運命であったかのように、生誕地の大阪で叶った。

取材・文●内田暁

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