コナーズがマッケンローに負けるときは、いつもサーブ&ボレーにやられている。それがいいときは手がつけられない。なんとかストローク戦に持ちこもうと思っても、その前にポイントは終わっているのだった。
「しかし、今日は違う。ボレーのタイミングが合っていない。つけこむならここだ」
コナーズは楽になった。ダブルスでよきパートナーを得たような心強さだった。第2セットは5-3とコナーズがリードしていた。狙いがズバリと当たった。次のサービスはコナーズ。ここで、信じられないような凡ミスがマッケンローに2つも出た。ビギナーでもしないようなミスだ。
ある意味では、この2つのミスが勝収を左右したと言えるかもしれない。この直後、マッケンローはあわれなほど落ちこみ、自らのペースを狂わせていったからだ。
1つ目。最初のポイント。
フォアハンドの鋭いアプローチでネットに詰めたマッケンローは、コートの外に追い出されたコナーズが苦しまぎれに放ったロブをジャンピング・スマッシュ。
「やられたな」。コナーズはお手上げだった。しかし、ボールは大きくベースラインをアウト。どよめく観客。苦笑いが止まらないのはコナーズだ。
2つ目。コナーズ30-0からのポイント。
マッケンローは、バックハンドのアプローチをベースラインぎりぎりに決めてネットダッシュ。絶妙なアプローチにコナーズの腰がくだけた。それでも必死にラケットを出すコナーズ。ボールはフラフラッと上がり、ネットに待ち構えているマッケンローの前にラケットをチョコンと出すだけでエースになりそうな超チャンスボールだった。
ところが、マッケンローはこのボールをスマッシュでクロスに大きくアウトさせてしまった。「しまった」。信じられないことだった。頭を抱えるマッケンロー。観客たちは、今見たシーンを、もう一度心の中でスローモーションにしながら、「あんなマックを初めて見たよ」と口々にささやき合っていた。
コナーズはマッケンローの心憎いプレゼントもあって、このセットを6ー3と取り返した。この2つの凡ミスがマッケンローにもたらしたものは大きかった。何にしても理由がわからない……。
(続く)
文●立原修造
※スマッシュ1986年8月号掲載原稿に加筆・修正
【PHOTO】マッケンローetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1
「しかし、今日は違う。ボレーのタイミングが合っていない。つけこむならここだ」
コナーズは楽になった。ダブルスでよきパートナーを得たような心強さだった。第2セットは5-3とコナーズがリードしていた。狙いがズバリと当たった。次のサービスはコナーズ。ここで、信じられないような凡ミスがマッケンローに2つも出た。ビギナーでもしないようなミスだ。
ある意味では、この2つのミスが勝収を左右したと言えるかもしれない。この直後、マッケンローはあわれなほど落ちこみ、自らのペースを狂わせていったからだ。
1つ目。最初のポイント。
フォアハンドの鋭いアプローチでネットに詰めたマッケンローは、コートの外に追い出されたコナーズが苦しまぎれに放ったロブをジャンピング・スマッシュ。
「やられたな」。コナーズはお手上げだった。しかし、ボールは大きくベースラインをアウト。どよめく観客。苦笑いが止まらないのはコナーズだ。
2つ目。コナーズ30-0からのポイント。
マッケンローは、バックハンドのアプローチをベースラインぎりぎりに決めてネットダッシュ。絶妙なアプローチにコナーズの腰がくだけた。それでも必死にラケットを出すコナーズ。ボールはフラフラッと上がり、ネットに待ち構えているマッケンローの前にラケットをチョコンと出すだけでエースになりそうな超チャンスボールだった。
ところが、マッケンローはこのボールをスマッシュでクロスに大きくアウトさせてしまった。「しまった」。信じられないことだった。頭を抱えるマッケンロー。観客たちは、今見たシーンを、もう一度心の中でスローモーションにしながら、「あんなマックを初めて見たよ」と口々にささやき合っていた。
コナーズはマッケンローの心憎いプレゼントもあって、このセットを6ー3と取り返した。この2つの凡ミスがマッケンローにもたらしたものは大きかった。何にしても理由がわからない……。
(続く)
文●立原修造
※スマッシュ1986年8月号掲載原稿に加筆・修正
【PHOTO】マッケンローetc…伝説の王者たちの希少な分解写真/Vol.1