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海外テニス

新たなクレーコーター像を構築したカルロス・モヤ。破壊力抜群のフォアはナダルへと通じる【レジェンドFILE33】

スマッシュ編集部

2020.12.06

ラケットヘッドを落とさずにスイングし、前方へのパワーを最大限に加えたモヤのフォアハンド。それまでのスペイン選手像を覆す破壊力を誇った。写真:スマッシュ写真部

ラケットヘッドを落とさずにスイングし、前方へのパワーを最大限に加えたモヤのフォアハンド。それまでのスペイン選手像を覆す破壊力を誇った。写真:スマッシュ写真部

 1990年代終盤になると、クレーでも攻撃力がなければ勝てない時代になってきた。98年に全仏オープンを制したモヤは、それまでのクレーコーターの枠を超えた破壊力抜群のストロークを持つプレーヤーだった。極端なことを言えば「モヤ以前」と「モヤ以降」に分けられるくらい、彼は世界のテニスを変えた。

 それまでのクレーコートの戦い方は、トップスピンをかけて高くボールを弾ませ、相手の強打を防ぎ、持久戦に持ち込むというものだったが、モヤはフォアハンドだけでなく、パワーが劣るとされていたバックハンドでさえハードヒットしてきた。

 モヤの登場によって男子テニス界は「スペインテニス全盛時代」を迎えることになり、最終形としてラファエル・ナダルが生まれたのだ。
 
 分解写真で紹介したのは、モヤの最大の武器であるフォアハンドの強打。技術的に目を引くのは、彼は並外れたスイングスピードを下から上ではなく、後ろから前へのパワーに使い、ボールをつぶすようにしてヒットしている点だ。

 1コマ目で高い位置にラケットを用意しているが、スイングを開始する4コマ目を見ると、ラケットヘッドがほとんど落ちておらず、水平に近い軌道でラケットを振っているのがわかる。かつてスペインでナンバー1だったセルジ・ブルゲラなどとは大違いだ。

 最後に右足が大きく前に出ているのも見逃せない(10コマ目)。このダイナミックなステップは、彼のスイングの勢いがいかに凄まじかったかを物語っている。

【プロフィール】カルロス・モヤ/Carlos Moya(ESP)
1976年生まれ。ATPランキング最高位1位(99年3月)。グランドスラム通算1勝(RG:98年)。守備的なプレーが主流だったスペインで新たな形を体現した攻撃的ストローカー。クレーは言うに及ばず、ハードでも97年全豪で準優勝、98年全米でベスト4と好成績を残している。99年には、スペイン人として初の男子シングルスNo.1を経験したが、キャリア後半は右肩の故障に苦しみ、最後は脚部の故障で引退。現在は、同郷マヨルカ島の後輩であるR・ナダルのコーチを務める。

編集協力●井山夏生 構成●スマッシュ編集部

【PHOTO随時更新】モヤをはじめ、サンプラス、アガシらレジェンドの希少な分解写真
 
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