専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
国内テニス

一直線に世界へ! 伊達公子のジュニア育成プロジェクト、いよいよ選考選手が国際大会に挑む

内田暁

2020.11.28

ワイルドカード選考試合に参加したジュニアたち。中央の伊達公子を囲んで、前列左から成田百那、永澤亜桜香、奥脇莉音、山上夏季の各選手。写真:ヨネックス株式会社

ワイルドカード選考試合に参加したジュニアたち。中央の伊達公子を囲んで、前列左から成田百那、永澤亜桜香、奥脇莉音、山上夏季の各選手。写真:ヨネックス株式会社

 その選考基準について、伊達は「彼女たちが、本来の目標である世界に近づくため、何が必要かを見極めたい」と言った。

「ワイルドカードをあげることが必要ならそうするし、あげないことが、彼女たちがより早く目標に到達する助けになる場合もある」。それは伊達自身がジュニア時代に、恩師である小浦猛志の指導理念として体験したことでもあった。

「小浦さんは、周囲の人は私にワイルドカードを出すと言っても、あえて予選から出させたことがあったと聞きます。それは予選で勝って、自信を与えさせるため。何がその選手にとって最良かは、個々の性格や年齢や立場によっても違う。それらを総合的に考えて決めたいと思います」

 そのような信念を持って、伊達は4人……特にワイルドカード選考対象になる若い2人に、鋭い視線を送っていた。

 その2人の戦う姿は、伊達の目にも「それぞれの立場でパフォーマンスを上げようという意志は感じられた」と映ったという。特に伊達が評価したのが、最年少の山上の成長。ただ、最年長の奥脇莉音に敗れたことに関しては、試合に向かう姿勢に疑問を抱いた。

 今回、その山上に伊達が“選考結果通達”をした際のやりとりにこそ、このプロジェクトの特性が色濃く浮き出ていたと言える。
 
 伊達は、山上の上達や気持ちの強さを認めたうえで、「奥脇さん相手に、本気で勝ちにいっていたか? どこかで、年齢や体格差を言い訳にしていなかったか?」と問い詰めた。そして山上本人に「あなたは予選と本戦、どちらのワイルドカードが欲しい?」と問う。

「本戦です」
 間髪入れずに、山上が答えた。

「本戦に出れば、1回戦で年齢もパワーも上の選手と戦うかもしれない。今日を境に、言い訳はしない。体格もパワーも言い訳にしない。それができる?」
 重ねる伊達の追及にも、山上は「はい」と応じる。

「ならば、本戦のワイルドカードを出します」
 伊達の表情が、ふっと緩む。「目標は?」の問いに返ってきた「優勝」の山上の言葉には、思わず「早いね!?」と笑い声を上げる。師弟の関係性や意識の共有が垣間見える、微笑ましい一幕だった。

 山上本人は「こんなチャンスは二度とないと思い、全試合勝つつもりで来た」と言う。それだけに奥脇との試合では、伊達の指摘通り「気持ちで引いてしまった」ことを自認し悔いた。

 13歳にして、上に駆け上がるには「一瞬の奇跡」の連続性が必要と感じる山上は、本戦ワイルドカードを得ることに迷いはなく、改めて、出るからには優勝を目指すと言った。

「私には、テニス界のために何ができる……?」
 伊達が自身に質し続けた問いへの、ひとつの答えが、ここにある。

取材・文●内田暁

【PHOTO随時更新】世界の舞台で躍動する日本人トップジュニア特集
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号