夢への道の険しさを知った上で、夢を叶えるためだろう。大坂は今季、経験豊かな心強い参謀たちをチームに招いた。一人は、コーチのウィム・フィセッテ氏。就任早々、大坂から「プロフェッサー」のニックネームを与えられた彼は、データ分析と戦術立案に長けた知将だ。過去にシモナ・ハレップを全仏決勝に、そしてアンジェリーク・ケルバーをウインブルドン優勝に導いた実績が手腕を物語る。その経験と戦略を、大坂にも授けてくれるはずだ。もう一人の心強いチームスタッフが、ストレングス&コンディショニングコーチの中村豊氏。フィジカル強化のスペシャリストで、何よりテニスに適した「身体の動かし方」に知悉した、この道の第一人者だ。
IMGアカデミーやオーストラリアテニス協会でも手腕を振るった中村の、最大の功績として知られるのは、マリア・シャラポワの専属トレーナーだろう。当時、四大大会のうち全仏のみ優勝が無かったシャラポワは、「赤土で勝てるようにしてほしい」という明確な目的をもって、中村を雇ったという。その要望に応えるべく中村は、土台作りから赤土でのスライディング法まで、プログラムを打ち込むように段階的かつ厳格に強化に取り組んだ。結果、シャラポワが全仏を制し悲願を達成したのは、テニス界では有名なサクセスストーリーだ。
大坂のトレーナーとなった中村は、新たな教え子を「テニス界で五指に入るアスリート」と規定し、全てのサーフェスで活躍するポテンシャルの持ち主だとみなしている。コロナ禍によるツアー中断期のトレーニングも、直近のハードコートで勝つことを目指しつつ、「クレーやグラスの強化にも共通するプログラムを組んできた」と言った。今季はウインブルドンが中止になり、全仏はケガで欠場したため、トレーニングの成果を披露する機会は残念ながら訪れず終い。ただ中村は、今の取り組みの真価が発揮されるのは、来年以降と目している。
「僕のなかでは、勝負は来年です。2021年の全豪から、ピークにかなり入っていけると思うんです。23~26歳の中期的な設定でいうと、今は土台を作り、彼女のポテンシャルを引き出す時。ここからの3年から5年で爆発してほしい。セレナ(・ウィリアムズ)や(ステフィ・)グラフのレベルまで行ってほしいし、来年はその第一歩だと思います」。
約2年前に大坂は、「私は、夢に至る道の半分まで来ている」と言った。ただ恐らく今の彼女は、自身の現在地をそうは捉えていないだろう。より大きなビジョンを持つ仲間を経て、目指す地点もより遠くへ。そのような視座を獲得した時、目指すキャリア・グランドスラムも、夢への通過点として実現に近づくはずだ。
文●内田暁
IMGアカデミーやオーストラリアテニス協会でも手腕を振るった中村の、最大の功績として知られるのは、マリア・シャラポワの専属トレーナーだろう。当時、四大大会のうち全仏のみ優勝が無かったシャラポワは、「赤土で勝てるようにしてほしい」という明確な目的をもって、中村を雇ったという。その要望に応えるべく中村は、土台作りから赤土でのスライディング法まで、プログラムを打ち込むように段階的かつ厳格に強化に取り組んだ。結果、シャラポワが全仏を制し悲願を達成したのは、テニス界では有名なサクセスストーリーだ。
大坂のトレーナーとなった中村は、新たな教え子を「テニス界で五指に入るアスリート」と規定し、全てのサーフェスで活躍するポテンシャルの持ち主だとみなしている。コロナ禍によるツアー中断期のトレーニングも、直近のハードコートで勝つことを目指しつつ、「クレーやグラスの強化にも共通するプログラムを組んできた」と言った。今季はウインブルドンが中止になり、全仏はケガで欠場したため、トレーニングの成果を披露する機会は残念ながら訪れず終い。ただ中村は、今の取り組みの真価が発揮されるのは、来年以降と目している。
「僕のなかでは、勝負は来年です。2021年の全豪から、ピークにかなり入っていけると思うんです。23~26歳の中期的な設定でいうと、今は土台を作り、彼女のポテンシャルを引き出す時。ここからの3年から5年で爆発してほしい。セレナ(・ウィリアムズ)や(ステフィ・)グラフのレベルまで行ってほしいし、来年はその第一歩だと思います」。
約2年前に大坂は、「私は、夢に至る道の半分まで来ている」と言った。ただ恐らく今の彼女は、自身の現在地をそうは捉えていないだろう。より大きなビジョンを持つ仲間を経て、目指す地点もより遠くへ。そのような視座を獲得した時、目指すキャリア・グランドスラムも、夢への通過点として実現に近づくはずだ。
文●内田暁