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海外テニス

大坂なおみの躍進を支えるキーマン、中村豊トレーナーは、彼女をどう変えたのか?【全豪オープン/現地発リポート】〈SMASH〉

内田暁

2021.02.17

かつてシャラポワを女王にふさわしいフィジカルに鍛え上げたのが中村氏だ。そうした経験の全てを大坂に注ぎ込み、「日本のスポーツ界に還元したい」とも願う。(C)Getty Images

かつてシャラポワを女王にふさわしいフィジカルに鍛え上げたのが中村氏だ。そうした経験の全てを大坂に注ぎ込み、「日本のスポーツ界に還元したい」とも願う。(C)Getty Images

 この“言語の共有”は、中村が何より重要視することでもある。

 トップアスリートに課すトレーニングも、何も特別なことをするわけではない。ただ、それを何のためにやるのか? そして指導者が発する言葉を理解し身体で表現できるかが、大きな差を生むことになる。

「トレーニングでやることの大半は、“ランジ”などの簡単な動きなんです。片足を大きく前に出し、ヒザを地面に付ける。ただ、その動作をすることに何の意味があるかを知ることが大切です。だから、単に動かし方を見せるだけでなく、なぜ、何のためにこれをやるのかを話します」
 
 さらには、そのトレーニングが試合のどのような局面で生きるかも、しっかりと伝えていく。

「『バックサイドにボールが来た時に、深く入れるように』とか、『ドロップショットを返す時、ギリギリで手が上手に伸びるように、下半身を安定させるためにこれをやる』とか。毎日、繰り返してそれを聞かせます」

 今大会の大坂は、3回戦でオンス・ジャブール、準々決勝ではシェイというドロップショットの名手と対戦し、いずれも相手の武器をフットワークで封じてみせた。その背景にはこれら、意義を理解した上でのトレーニングがあったようだ。
 
 加えて、昨年のオフシーズンでは「彼女のコート上での動き、エネルギーや覇気、表情の変化を察知して、その日ごとに、負荷から強度、運動量をプランニングすること」に留意した。日々似た作業の繰り返しでありながら、なおかつ「機械化させない。ルーティーンでありながら、意識を持って取り組めているか」が大きな差を生む。

 それら、繊細な変化が持つ意図を、大坂もしっかり受け取っていた。
「楽しかった。同じことの繰り返しだけれど、でも、楽しかった」
 長いオフシーズンのトレーニングを、大坂はそう定義した。

 メルボルンに入ってからの2週間の隔離期間は、トレーニングの時間も限られる中、「ストレングス系、心肺機能系、ムーブメント/フットワーク系を偏りなく取り組んできた」。そして今大会では、実戦を重ねる中で、「動きの深みと敏捷性、サーブのダイナミック性やバネも多少出てきました」との手応えを、中村は感じている。

 だがそれらも、大坂なおみという「テニス界で五指に入るアスリート」のポテンシャルを思えば、長いプロセスの途中過程にしか過ぎない。

「まだまだ進化中です。一歩一歩、丁寧かつダイナミックに」、未完の大器を磨き上げていく。

現地取材・文●内田暁

【PHOTO】2度目の全豪オープン制覇へ! メルボルンで躍動する大坂なおみ
 

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