なおもスキャンダルは止まらない。同時期、ロンドンで現役時代に獲得した記念品、試合で着用していたウェア、豪華な時計などがネット上で競売に掛けられているのがわかった。ワイレス・ハーディ社が掲載し、収益の一部がベッカーの借金返済に充てられる仕組みだった。出品されていたのはウインブルドンの優勝カップ2個、1989年全米オープン優勝トロフィーのレプリカ、デ杯優勝トロフィーのミニチュア。そうまでして急場を凌ごうとしたのか。
テニス界におけるベッカーは、いまだに超大物のエキスパートとして名が通っている。英国BBCとユーロスポーツでテレビリポーターを務めており大変な人気を誇る。また2014年からの2年間、ノバク・ジョコビッチのコーチに就いて6回のグランドスラム優勝へと導くすご腕を披露。こうしたことからドイツテニス連盟は、彼を男子テニス界の最高責任者に任命するに至った。
ところがコート外の世界となると、もっぱら問題だらけで「不祥事のデパート」なる称号さえ聞こえてくる有様だ。隣国スイスで彼は目下、民事裁判の被疑者だ。長年のビジネスパートナーだったハンス・ディーター・クレーベンからの、4000万ドル(約44億円)の支払い請求訴訟が最高裁で係争中なのである。 またプライベートでも四面楚歌だ。13年間の付き合いを経て結婚したモデルのリリー夫人とは、9年間にわたり家庭生活を営んできたが、ここにきて破局。ドイツの大衆紙『ビルト』に語ったところによると、「双方が合意し、友好的に別れた」となっている。2人の間にはアマデウスという息子がいる。ちなみにベッカーはリリー、前妻、不倫相手との間に計4人の子どもをもうけている。
リリー夫人との離婚が、ベッカーの金銭問題に関係するものなのかどうかはわからない。ただ1つだけハッキリしているのは、リリー夫人が超リッチな生活を嫌ってなかったということである。ベッカー50歳の誕生日に、リリー夫人は手紙をしたためた。その内容が週刊誌『ブンテ』に掲載されたのだが、中身はこういうものだった。
「あなたは世の女性全てが夢見る暮らしを私に与えてくれました。深い愛情と信頼、そしてプライベートジェットに乗っての豪華旅行、エレガントなデザイナーズファッション、最高のクルマ、贅沢なパーティにも本当に感謝しています」――
現役を退いてもなお、ベッカーは波乱万丈の毎日を送る運命のようである。
文●レネ・シュタウファー
ITWA(国際テニスライターズ連盟)正会員で、経験豊富なスイス人テニスジャーナリスト。ヨーロッパを中心に第一線で活躍しており、フェデラーやヒンギスとも親交が厚い。2019年に発刊したフェデラーをテーマにした著書は、スイスでベストセラーとなっている。
構成・翻訳●安藤正純
※『スマッシュ』2018年8月号より転載
テニス界におけるベッカーは、いまだに超大物のエキスパートとして名が通っている。英国BBCとユーロスポーツでテレビリポーターを務めており大変な人気を誇る。また2014年からの2年間、ノバク・ジョコビッチのコーチに就いて6回のグランドスラム優勝へと導くすご腕を披露。こうしたことからドイツテニス連盟は、彼を男子テニス界の最高責任者に任命するに至った。
ところがコート外の世界となると、もっぱら問題だらけで「不祥事のデパート」なる称号さえ聞こえてくる有様だ。隣国スイスで彼は目下、民事裁判の被疑者だ。長年のビジネスパートナーだったハンス・ディーター・クレーベンからの、4000万ドル(約44億円)の支払い請求訴訟が最高裁で係争中なのである。 またプライベートでも四面楚歌だ。13年間の付き合いを経て結婚したモデルのリリー夫人とは、9年間にわたり家庭生活を営んできたが、ここにきて破局。ドイツの大衆紙『ビルト』に語ったところによると、「双方が合意し、友好的に別れた」となっている。2人の間にはアマデウスという息子がいる。ちなみにベッカーはリリー、前妻、不倫相手との間に計4人の子どもをもうけている。
リリー夫人との離婚が、ベッカーの金銭問題に関係するものなのかどうかはわからない。ただ1つだけハッキリしているのは、リリー夫人が超リッチな生活を嫌ってなかったということである。ベッカー50歳の誕生日に、リリー夫人は手紙をしたためた。その内容が週刊誌『ブンテ』に掲載されたのだが、中身はこういうものだった。
「あなたは世の女性全てが夢見る暮らしを私に与えてくれました。深い愛情と信頼、そしてプライベートジェットに乗っての豪華旅行、エレガントなデザイナーズファッション、最高のクルマ、贅沢なパーティにも本当に感謝しています」――
現役を退いてもなお、ベッカーは波乱万丈の毎日を送る運命のようである。
文●レネ・シュタウファー
ITWA(国際テニスライターズ連盟)正会員で、経験豊富なスイス人テニスジャーナリスト。ヨーロッパを中心に第一線で活躍しており、フェデラーやヒンギスとも親交が厚い。2019年に発刊したフェデラーをテーマにした著書は、スイスでベストセラーとなっている。
構成・翻訳●安藤正純
※『スマッシュ』2018年8月号より転載