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海外テニス

日本女子テニスをけん引してきた土居美咲と奈良くるみ。コーチや錦織など、周囲の「助け」を借りてコロナ禍を転戦する2人のサバイバル術<SMASH>

内田暁

2021.04.29

苦手だった海外遠征も苦にならなくなったという土居美咲。(C)Getty Images

苦手だった海外遠征も苦にならなくなったという土居美咲。(C)Getty Images

 オーストラリアシリーズ出場のため、日本を発ったのが1月15日。以降彼女は、中東、アメリカと転戦を重ね、その間、一度も日本に帰ってはいない。

 20代の前半頃、土居はどちらかといえば、海外遠征を苦手とする選手だった。最大のストレス要因は「英語と、日本食」。遠征が長引くと、気持ちもテニスも落ち込んだ。

 その彼女が今や、3か月半に及ぶ遠征も「全然、気にならなくなりました」とあっけらかんと言い放つ。

 劇的な変化への分岐点は、24歳の時から共にツアーを回るようになった、コーチのクリス・ザハルカの存在だ。オーストリア生まれでアメリカ国籍を持つザハルカは、カリフォルニアやフロリダ、そしてヨーロッパでも複数の拠点や伝手を持つ。今回の遠征でも土居は、ザハルカが所有するフロリダのアパートにトレーナーとともに滞在し、サンチェス・カサールアカデミーで男子選手をヒッティングパートーナーに練習してきたという。

「アメリカにはクリスの拠点があるし、ヨーロッパでもどこかしら行ける場所がある。外からは、私は大会出ずっぱりに見えるかもしれませんが、実際は練習してリラックスできる場所が海外にもあるので、そこが大きいと思います」

 今回も、北米シリーズ終了後の帰国も少し考えたが、練習環境等も考慮したとき、アメリカに残るのが合理的だと判断した。

 唯一の心配の種は、使い捨てコンタクトのストック。ところが「確認してみたら、ウインブルドン終わるまで大丈夫なくらい、たくさん持ってたんです」と笑う。1月に日本を発つ時点ですでに、潜在意識下で、長期遠征の準備をしていたのだろう。
 
 連敗スタートとなった今季だが、試合を重ねるごとに調子を上げ、現在はランキングも70位台に上げている。

 プレー面での取り組みを聞くと、「フォアは威力の向上。バックではスライスを絡めてバリエーションをあげたい。クレーではセカンドサーブをしっかりキックさせたいし、ファーストサーブでもっとフリーポイントを取れるようにしたいので……」と列挙した後、「全部ですね」と照れた笑みをこぼす。

 試合に出るのは、楽しいですか——?
 その問いに、「うん、楽しい」と即答する。あまりの迷いの無さと無垢な口調に、充実感が溢れていた。

 やや余談ではあるが、一時は切り絵を趣味とした土居が、今ハマっているのは、シャッフルダンス。「今も、こっそり練習してます」と、新作のお披露目が近いことを明かした。

 海外を飛び回りながらも、同じ大会の出場機会は少なかった土居と奈良の足跡は、3月のアメリカで交錯した。奈良がチャールストンで予選を突破した際には、SNSをあまりやらない友人に代わり、土居が自身のツイッターで奈良の活躍を伝えてもいる。

 土居にとって奈良は、ジュニア時代から常に自身の先を歩み、ランキング的には先行するようになった今も、尊敬できる存在だという。

 そして奈良も、「わたしも美咲を見て、まだまだがんばれると思う。お互いにそんな存在でありたいと思います」と言った。
 
 長期遠征も苦にせぬ円熟味と、自身の成長を楽しむ新鮮なモチベーション。その2つを両輪に、日本女子テニスをけん引してきた2人は、足取り軽くコロナ禍のツアーも駆けていく。

文●内田暁

【PHOTO】土居美咲、奈良くるみ、大坂なおみなど世界で戦う日本人女子テニスプレーヤーたち!

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