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海外テニス

肩の状態が気になる錦織圭。年内に30位以内を目指し全米OPにノーシードで挑む<SMASH>

内田暁

2021.08.29

東京五輪の1回戦では世界7位のルブレフから勝利を挙げて、良い感覚を取り戻し始めていた錦織。(C)Getty Images

東京五輪の1回戦では世界7位のルブレフから勝利を挙げて、良い感覚を取り戻し始めていた錦織。(C)Getty Images

 久々に試合数を連ねた後、移動と時差を経て再びトーナメントに出ることが、いかに身体に負荷をかけるかは、本人が誰よりも理解していただろう。ただそれでも出るという決断を下したのは、何にも増して勝利を欲するアスリートの本能なのだろう。

 今夏の錦織の言葉を聞いて、ふと思い出したのは、10年近く前に錦織が口にした言葉だった。上位勢にケガが増え、ツアーの過酷さが頻繁に論じられた時期。とりわけラファエル・ナダルは、ハードコートの試合数の多さに「選手への負荷が大きすぎる」と苦言を呈した。

 そのナダルの言葉を伝え意見を求めた時、当時まだ20代前半だった錦織は、さらりと言った。「ナダルはクレーが得意だから、そう思うのかもしれません。僕はハードが得意だから、ケガしてもハードコートで多く試合がしたいですけどね」

 その口調や表情のおだやかさと、口にした言葉の苛烈さのギャップが、錦織のアスリートの本質を浮き彫りにした瞬間だった。
 
 あの時から時間は流れ、錦織は31歳になった。若い頃から「身体は強くない」と自覚し、「30代の自分が見えない」と言っていた彼にしてみれば、これだけのケガの歴史を重ねても今なお、上を視界にとらえ戦えている時間は、何にも変えがたいのかもしれない。

 55位。それが、今の錦織の世界の地位だ。ただ彼は「年内には30位に入りたい」と明言した。それは来季には、グランドスラムにシード選手として参戦するという意思表明でもある。

 果たして今年の全米オープンは、シード選手復活への足掛かりとなるだろうか? その道のりは、当然ながら厳しい。初戦の相手こそ113位のカルーソだが、そこを突破すれば、ランキング通りなら2回戦でゴファン。そして3回戦では、世界1位のジョコビッチが立ちはだかる。

文●内田暁

【PHOTO】東京オリンピックでの錦織圭の厳選ショット!

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