もっとも言うのは簡単だが、何しろ性格に根差したプレースタイルや哲学だ。変えるのは容易ではない。それでも試合ごとに2人は言葉を重ね、思考をすり合わせることで、一歩ずつ目指す地点へと進んでいった。
その一つの到達点が、今年6月のノッティンガム大会優勝だろう。この時の勝因として二宮は、今まで小野田と取り組んできた「流れを読む」能力の向上を挙げた。もちろん手応えを覚えたのは、コーチにしても同様だ。
「今年のツアーでは、流れを読むことができるようになってきました。試合後の話し合いでも、『あそこで攻めた方が良かったですよね』『あそこは攻めすぎましたよね』という言葉が彼女から聞けるようになったので、わかってきてくれたかなと思います」
それらコーチとして磨いた分析力と戦術眼は、自らが選手としてコートに立った時、思わぬ副産物ももたらした。今年11月の全日本選手権で、小野田は予選から参戦した。コロナ禍で試合数が減った選手への配慮で、昨年のランキングも使えたがゆえの僥倖だ。
とはいえ、久々の試合である。「自分に期待はしていない」状況ではあった。ところがいざコートに立つと、相手が、そして何より自分がよく見えた。
「自分を客観的に見られるようになった。いつもなら失速しているところを、一歩踏ん張ることができた。自分の現状を把握し、動かない身体や持っている技術を理解したなかで、最善の手を尽くすことができていたかなと思います」
その武器をフル活用し、予選を突破して本戦へ。本戦は初戦で敗れたが、収穫は大きかったようだ。
現在33歳の小野田は、今後も「チャンスさえあれば、試合もやりたい」と断言した。それは選手としての心身の感覚が、コーチ業にも生きるからだという。
「コーチばっかりして試合を外から見ていると、テレビゲームをやっているような感覚になってしまうんです。選手のことを簡単に考えてしまう。『なんであんなミスするんだ』とか思いがちですが、本当はコートにいないとわからないプレッシャーなどがある。そのあたりを、自分はまだ選手をやっているからこそ想像できるし、選手とも、もう一歩踏み込んだ話し合いができるように思います」
若くして、コーチとしてツアーやグランドスラムの場数を踏む小野田は、将来的には海外選手のコーチもしてみたいと貪欲だ。ただその前に、成し遂げたいことがある。
「二宮選手のおかげで、こんなに早い段階からグランドスラムを見させていただいた。彼女は既にグランドスラムで準優勝しているので、優勝させてあげたいなと思います」
コーチとして選手と共に目指す、グランドスラムの頂点。今年の全日本出場経験は、その夢実現への糧となる。
取材・文●内田暁
【PHOTO】二宮真琴ら東京オリンピックに挑んだテニス日本代表のスナップ集
その一つの到達点が、今年6月のノッティンガム大会優勝だろう。この時の勝因として二宮は、今まで小野田と取り組んできた「流れを読む」能力の向上を挙げた。もちろん手応えを覚えたのは、コーチにしても同様だ。
「今年のツアーでは、流れを読むことができるようになってきました。試合後の話し合いでも、『あそこで攻めた方が良かったですよね』『あそこは攻めすぎましたよね』という言葉が彼女から聞けるようになったので、わかってきてくれたかなと思います」
それらコーチとして磨いた分析力と戦術眼は、自らが選手としてコートに立った時、思わぬ副産物ももたらした。今年11月の全日本選手権で、小野田は予選から参戦した。コロナ禍で試合数が減った選手への配慮で、昨年のランキングも使えたがゆえの僥倖だ。
とはいえ、久々の試合である。「自分に期待はしていない」状況ではあった。ところがいざコートに立つと、相手が、そして何より自分がよく見えた。
「自分を客観的に見られるようになった。いつもなら失速しているところを、一歩踏ん張ることができた。自分の現状を把握し、動かない身体や持っている技術を理解したなかで、最善の手を尽くすことができていたかなと思います」
その武器をフル活用し、予選を突破して本戦へ。本戦は初戦で敗れたが、収穫は大きかったようだ。
現在33歳の小野田は、今後も「チャンスさえあれば、試合もやりたい」と断言した。それは選手としての心身の感覚が、コーチ業にも生きるからだという。
「コーチばっかりして試合を外から見ていると、テレビゲームをやっているような感覚になってしまうんです。選手のことを簡単に考えてしまう。『なんであんなミスするんだ』とか思いがちですが、本当はコートにいないとわからないプレッシャーなどがある。そのあたりを、自分はまだ選手をやっているからこそ想像できるし、選手とも、もう一歩踏み込んだ話し合いができるように思います」
若くして、コーチとしてツアーやグランドスラムの場数を踏む小野田は、将来的には海外選手のコーチもしてみたいと貪欲だ。ただその前に、成し遂げたいことがある。
「二宮選手のおかげで、こんなに早い段階からグランドスラムを見させていただいた。彼女は既にグランドスラムで準優勝しているので、優勝させてあげたいなと思います」
コーチとして選手と共に目指す、グランドスラムの頂点。今年の全日本出場経験は、その夢実現への糧となる。
取材・文●内田暁
【PHOTO】二宮真琴ら東京オリンピックに挑んだテニス日本代表のスナップ集