ウインブルドンを含む3つのグランドスラム優勝に、2つのオリンピック金メダル。
忘れがたい700の勝利で綴る彼のキャリアに、“ターニングポイント”があるとすれば、それはなにだろうか――?
その問いにマリーは、小さくうつむき瞬時に記憶を巻き戻すと、さして間を置くことなく、訥々と語りはじめた。
「2012年のウインブルドンからオリンピックにかけての期間が、たぶん僕のキャリアにとって、すごく、ものすごく重要な時間だったと思う。
そう……実はちょうど、スタッフの1人と話していたばかりなんだ。ロジャー(フェデラー)が初めてグランドスラムを優勝したとき、彼は決勝で(マーク・)フィリポーシスと当たった。ラファ(ナダル)は、(マリアノ・)プエルタに決勝で勝ち、ノバク(ジョコビッチ)は(ジョー‐ウィルフリード・)ツォンガを破った。これらの対戦相手は誰も、メジャータイトルを持っていなかったんだ。
僕がグランドスラムのタイトルを懸けて戦ったのは、ロジャーが数回。ノバクも、当時幾つだったかわからないが優勝している。決勝で、既にメジャーを取っている選手と戦うのは、当然ながらとてもタフだった。
2012年のウインブルドンの決勝でロジャーに敗れたとき、僕は大きなプレッシャーを感じていた。『グランドスラムで優勝できると思うか?』と、何度も質問された」
ここまで一気に言葉をつむぐと、「実際、僕も自分自身に、幾度もこの問いを投げかけてしまっていたんだ」と、彼はぎこちなく笑った。
「そこに至るまでに必死に努力してきたのに、最後の最後で、どうしてもフィニッシュラインを越えられなかったのだから」と。
10年前――。
あの日のウインブルドン決勝敗戦後のスピーチは、英国の……いや、世界中のテニスファンにとっても、胸に迫る感傷的なシーンだった。
「近づいては来てるよね!」
明るく振舞おうとするも、こぼれる落ちる涙が、声を小刻みに震わせる。この敗戦はマリーにとって、4度目のグランドスラム決勝にして、4度目の敗戦だった。
忘れがたい700の勝利で綴る彼のキャリアに、“ターニングポイント”があるとすれば、それはなにだろうか――?
その問いにマリーは、小さくうつむき瞬時に記憶を巻き戻すと、さして間を置くことなく、訥々と語りはじめた。
「2012年のウインブルドンからオリンピックにかけての期間が、たぶん僕のキャリアにとって、すごく、ものすごく重要な時間だったと思う。
そう……実はちょうど、スタッフの1人と話していたばかりなんだ。ロジャー(フェデラー)が初めてグランドスラムを優勝したとき、彼は決勝で(マーク・)フィリポーシスと当たった。ラファ(ナダル)は、(マリアノ・)プエルタに決勝で勝ち、ノバク(ジョコビッチ)は(ジョー‐ウィルフリード・)ツォンガを破った。これらの対戦相手は誰も、メジャータイトルを持っていなかったんだ。
僕がグランドスラムのタイトルを懸けて戦ったのは、ロジャーが数回。ノバクも、当時幾つだったかわからないが優勝している。決勝で、既にメジャーを取っている選手と戦うのは、当然ながらとてもタフだった。
2012年のウインブルドンの決勝でロジャーに敗れたとき、僕は大きなプレッシャーを感じていた。『グランドスラムで優勝できると思うか?』と、何度も質問された」
ここまで一気に言葉をつむぐと、「実際、僕も自分自身に、幾度もこの問いを投げかけてしまっていたんだ」と、彼はぎこちなく笑った。
「そこに至るまでに必死に努力してきたのに、最後の最後で、どうしてもフィニッシュラインを越えられなかったのだから」と。
10年前――。
あの日のウインブルドン決勝敗戦後のスピーチは、英国の……いや、世界中のテニスファンにとっても、胸に迫る感傷的なシーンだった。
「近づいては来てるよね!」
明るく振舞おうとするも、こぼれる落ちる涙が、声を小刻みに震わせる。この敗戦はマリーにとって、4度目のグランドスラム決勝にして、4度目の敗戦だった。