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海外テニス

『2012年ウインブルドンからロンドン五輪までの4週間』が元王者アンディ・マリーのテニス人生を激変させた!【シリーズ/ターニングポイント】

内田暁

2022.03.20

2012年のウインブルドン(写真)でグランドスラム決勝4敗目を喫したマリーは、試合後のスピーチで声を詰まらせた。(C)Getty Images

2012年のウインブルドン(写真)でグランドスラム決勝4敗目を喫したマリーは、試合後のスピーチで声を詰まらせた。(C)Getty Images

 ウインブルドンを含む3つのグランドスラム優勝に、2つのオリンピック金メダル。

 忘れがたい700の勝利で綴る彼のキャリアに、“ターニングポイント”があるとすれば、それはなにだろうか――?

 その問いにマリーは、小さくうつむき瞬時に記憶を巻き戻すと、さして間を置くことなく、訥々と語りはじめた。

「2012年のウインブルドンからオリンピックにかけての期間が、たぶん僕のキャリアにとって、すごく、ものすごく重要な時間だったと思う。

 そう……実はちょうど、スタッフの1人と話していたばかりなんだ。ロジャー(フェデラー)が初めてグランドスラムを優勝したとき、彼は決勝で(マーク・)フィリポーシスと当たった。ラファ(ナダル)は、(マリアノ・)プエルタに決勝で勝ち、ノバク(ジョコビッチ)は(ジョー‐ウィルフリード・)ツォンガを破った。これらの対戦相手は誰も、メジャータイトルを持っていなかったんだ。

 僕がグランドスラムのタイトルを懸けて戦ったのは、ロジャーが数回。ノバクも、当時幾つだったかわからないが優勝している。決勝で、既にメジャーを取っている選手と戦うのは、当然ながらとてもタフだった。

 2012年のウインブルドンの決勝でロジャーに敗れたとき、僕は大きなプレッシャーを感じていた。『グランドスラムで優勝できると思うか?』と、何度も質問された」
 
 ここまで一気に言葉をつむぐと、「実際、僕も自分自身に、幾度もこの問いを投げかけてしまっていたんだ」と、彼はぎこちなく笑った。

「そこに至るまでに必死に努力してきたのに、最後の最後で、どうしてもフィニッシュラインを越えられなかったのだから」と。

10年前――。

 あの日のウインブルドン決勝敗戦後のスピーチは、英国の……いや、世界中のテニスファンにとっても、胸に迫る感傷的なシーンだった。

「近づいては来てるよね!」

 明るく振舞おうとするも、こぼれる落ちる涙が、声を小刻みに震わせる。この敗戦はマリーにとって、4度目のグランドスラム決勝にして、4度目の敗戦だった。
 
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