なお、勝利の副賞として手にした“好きなジュースを錦織に買ってもらえる権利”施行の際には、彼のお薦めドリンクにことごとくダメ出しし、「もー、自分で選んでよー」と嘆かせる一幕もあった。
もっとも網田にしてみれば、錦織は「来た時には泣きそうになった」ほどに憧れている選手。ドリンク選びに時間がかかったのも、「せっかくなら本当に好きなものをと思って」と、熟考に熟考を重ねたためだ。
そんな網田が錦織に憧れるのは、「みんなに応援されるところ」。それは魅力的なプレーももちろん、人間性も含めてだ。実際に今回、錦織の人間性に触れた網田は、彼が多くの人から愛される理由を実感したという。
なお、もう一つの副賞であるサイン色紙には、こんな一言が添えられていた。
「もっと低く!」
これは、打つ際の姿勢を低く保つということ。網田のプレーを見た錦織からの、心憎い助言だった。
リターンを中心に指導した翌日にも、錦織はキャンプを訪れ、今度はダブルスやボレーの伝授にいそしんだ。一人ひとりのボレーに目を凝らしては、「ちょっとあの子のボレー直したいです」と伊達さんに進言し、隣コートに呼び出しての個別指導も。
通称“リハビリ部屋”呼び出しの第一号となった添田栞菜は、最初は何事かと不安顔。その後、錦織にボレーを教えてもらえると知り、途端に表情に明かりが灯った。
「ボレーでずっと悩んでいたところもあったので、教えてもらえてうれしかったです。フォアもバックもテイクバックが大きくなりすぎるので、身体の横に引いてと助言をもらいました」
そう喜びを語る添田は、元世界47位の添田豪の姪。この春から通信制の高校に通い、テニスの世界で上を目指す決意を固めた彼女にとって、今回のキャンプは、錦織の言う「鮮明に記憶に残る」経験になっただろう。
合宿主催者の伊達さんにとっても、今回の錦織の姿には、「新しい発見」があったという。
「以前の彼に比べると、感覚的なところをベースとしたなかで、言葉の表現の幅がすごく広がっているんだなと感じました。見ているポイントとしても、人それぞれの良い部分を見抜くのが早いなというのはすごく思いますね」
そう伊達さんが“コーチ・錦織”を称賛すれば、錦織も「伊達さんが今やっていることは、自分が将来いなきゃいけない立場。伊達さんから見習いたい気持ちもありました」と、今回の陣中見舞いの理由を語った。
日本テニス界が有する最高峰の人材が、互いに敬意を示し、言葉を交わし考えをすり合わせながら、丁寧に後進を導いていく――。眩しい陽光に照らされた沖縄のハードコートには、間違いなく、希望の光が差していた。
取材・文●内田暁
【PHOTO】「伊達公子プロジェクト」過去のジュニアキャンプのスナップ集
もっとも網田にしてみれば、錦織は「来た時には泣きそうになった」ほどに憧れている選手。ドリンク選びに時間がかかったのも、「せっかくなら本当に好きなものをと思って」と、熟考に熟考を重ねたためだ。
そんな網田が錦織に憧れるのは、「みんなに応援されるところ」。それは魅力的なプレーももちろん、人間性も含めてだ。実際に今回、錦織の人間性に触れた網田は、彼が多くの人から愛される理由を実感したという。
なお、もう一つの副賞であるサイン色紙には、こんな一言が添えられていた。
「もっと低く!」
これは、打つ際の姿勢を低く保つということ。網田のプレーを見た錦織からの、心憎い助言だった。
リターンを中心に指導した翌日にも、錦織はキャンプを訪れ、今度はダブルスやボレーの伝授にいそしんだ。一人ひとりのボレーに目を凝らしては、「ちょっとあの子のボレー直したいです」と伊達さんに進言し、隣コートに呼び出しての個別指導も。
通称“リハビリ部屋”呼び出しの第一号となった添田栞菜は、最初は何事かと不安顔。その後、錦織にボレーを教えてもらえると知り、途端に表情に明かりが灯った。
「ボレーでずっと悩んでいたところもあったので、教えてもらえてうれしかったです。フォアもバックもテイクバックが大きくなりすぎるので、身体の横に引いてと助言をもらいました」
そう喜びを語る添田は、元世界47位の添田豪の姪。この春から通信制の高校に通い、テニスの世界で上を目指す決意を固めた彼女にとって、今回のキャンプは、錦織の言う「鮮明に記憶に残る」経験になっただろう。
合宿主催者の伊達さんにとっても、今回の錦織の姿には、「新しい発見」があったという。
「以前の彼に比べると、感覚的なところをベースとしたなかで、言葉の表現の幅がすごく広がっているんだなと感じました。見ているポイントとしても、人それぞれの良い部分を見抜くのが早いなというのはすごく思いますね」
そう伊達さんが“コーチ・錦織”を称賛すれば、錦織も「伊達さんが今やっていることは、自分が将来いなきゃいけない立場。伊達さんから見習いたい気持ちもありました」と、今回の陣中見舞いの理由を語った。
日本テニス界が有する最高峰の人材が、互いに敬意を示し、言葉を交わし考えをすり合わせながら、丁寧に後進を導いていく――。眩しい陽光に照らされた沖縄のハードコートには、間違いなく、希望の光が差していた。
取材・文●内田暁
【PHOTO】「伊達公子プロジェクト」過去のジュニアキャンプのスナップ集