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海外テニス

【レジェンドの素顔12】ステファン・エドバーグの“はじらい”から自信みなぎるプレーへの変化│前編<SMASH>

立原修造

2023.03.15

“はじらい”ではなく微笑む余裕も生まれるようになった。写真:スマッシュ写真部

“はじらい”ではなく微笑む余裕も生まれるようになった。写真:スマッシュ写真部

微笑んでいた。余裕すら感じさせるほどの笑顔だった

 しかし、エドバーグもやがて、その“はじらい”と訣別しなくてはならない。自分の強さをもっと身体で表現する必要があるのだ。

 その兆しは、ジャパンオープンでも表れ始めた。深くて鋭いボレーを決めた時、それがさも当然のような表情を度々していた。

「彼の場合、自信を持つようになったことが大きい。この半年ばかりで、実にしっかりしたプレーヤーになってきたよ」

 コーチのピッカードもこう語っているように、みなぎる自信をプレーのところどころに感じさせるようになったのも、当時のエドバーグの特徴である。

 例えば、些細なことだが、ラッキーショットが入った時の表情に、その“自信”をうかがい知ることができる。ジャパンオープン決勝のペイト戦でも、当たり損ねのボールが運良くネットを越えて非常に効果的なドロップショットになったことがある。

 以前の彼だったら、それこそ“はじらい”を見せるところだろう。しかし、彼は微笑んでいた。余裕すら感じさせるほどの笑顔だった。
 
 エドバーグの来日は、前年のセイコースーパーテニス以来半年ぶりである。この半年前と比べても、彼は明るくなったし、よく笑うようになった。このこと1つをとっても、エドバーグが自分のテニスに自信を持ち始めたことがわかる。何よりも安定感が増した。

 特に準決勝のゴメス戦がそうだった。第1セットを先取され、第2セットもタイブレークにもつれこんでいた。本来なら“エドバーグ危うし”という場面である。しかし、ちっともそういう気は起こらなかった。“エドバーグは負けないだろう”と思わせる強さを、彼は見る者に与え続けていた。

 事実、エドバーグは苦しみながらもタイブレークを7-4で取ると、続く第3セットもゲームカウント6-2とゴメスを突き放して見事期待に応えている。

 取りこぼしが少ないという点で、エドバーグは“安心して見ていられるプレーヤー”に成長したといえるだろう。ここに至る道を考えると、“やっと”とも思えるし、“よくぞ”とも思える。

 いずれにしても彼は、自分を不自由にさせていた重圧に打ち勝ったのである。その重圧のために、エドバーグは3年間も苦しんでいた――。

~~後編へ続く~~

文●立原修造
※スマッシュ1987年7月号から抜粋・再編集
(この原稿が書かれた当時と現在では社会情勢等が異なる部分もあります)

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