19歳の伊藤あおい対23歳川岸七菜のフレッシュな顔合わせとなった女子決勝を制したのは、年少者の伊藤あおい。10代前半から国内の賞金大会で年長者相手に実戦を重ねてきた伊藤は、まだ10代とは思えぬほどに老獪で試合巧者だ。

　伊藤と川岸は前日の予選グループでも対戦し、その時も勝者は伊藤。ただ伊藤の脳裏には、「川岸さんはストロークが強い。特にバックでは完全に押される」との印象が深く焼き付いた。

　そこで決勝戦での再戦は、いつも以上にフォアハンドのスライスを多用。

「最初の試合で、相手が一番ミスってくれたのがスライスだったので、いつも以上にこすっていこうと」

　作戦的中で快勝の伊藤は、「性格の悪さが出ちゃってますね」と、舌を出しそうな勢いで照れた笑みをこぼした。相手を分析し、緩急用いて相手の身体も心も揺さぶりながら、自分のペースに引きずり込む……それこそが、伊藤あおいの真骨頂だ。
  「大会でもランキングポイントを数えるより、お金を数えてしまうタイプ」、「海外は苦手なので、あまり行きたくない」――果たしてそれらのコメントも、コート上の洒脱なプレーを見た後だと、本音か、はぐらかしなのか判別不能。

　ただ一つ、彼女が明言したのは「グランドスラムに出たい」の言葉。

　スライスやドロップショットを次々繰り出し、パワーで勝る相手を翻弄する伊藤のテニスが、果たして大柄な海外勢や世界のパワーテニスにどこまで通じるのか？

　来年には、そのような機会が多く見られるに違いない。

〈決勝の結果〉

◆男子シングルス決勝
徳田廉大（イカイ） 4-0 4-1 中川直樹（フリー）

◆女子シングルス決勝
伊藤あおい（SBCメディカルグループ） 4-3(4) 4-0 川岸七菜（アカラクリニック）

取材・文●内田暁

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