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海外テニス

グランドスラムの舞台に帰ってきた錦織圭、右肩負傷で途中棄権も2試合の中で見えた“光”【全仏オープン】<SMASH>

内田暁

2024.06.01

シェルトン(右)戦で右肩の痛みを理由に棄権した錦織(左)だが、「テニスはけっこう良かった」と収穫を得た。(C)Getty Images

シェルトン(右)戦で右肩の痛みを理由に棄権した錦織(左)だが、「テニスはけっこう良かった」と収穫を得た。(C)Getty Images

 1回戦の6番コート同様に、2回戦を戦った7番コートも、客席までの距離やベースライン後方のスペースが狭い。やれることが限られる難しい環境だが、その中でも錦織は、相手のサービスの特性を急ピッチで分析し、ポジションを変えながら、攻略法を模索した。

 ボディに来るキックサービスを、身体を反らせて飛び上がり、まるでスイングボレーのように打ち返す。あるいは、フェンスぎりぎりまで下がった所から、相手がサービスモーションに入った途端に猛ダッシュ。身体をぶつけるようにリターンを叩き込む。シェルトンの球威に、運動エネルギーも活用し全身で立ち向かう姿は、フランスのファンをも惹き付けた。

 しかもひとたびストローク戦に持ち込めば、相手の強打を吸収するかのように柔らかく捉え、こともなげに左右に打ち分けていく。日をまたぎ行なわれた第2セットでは、1-5の劣勢からも、深いリターンを連発し、この試合初となるブレークを奪い取る。最終的には第2セットも4-6で取られたが、十分に見せどころを作り、観客を沸かせた2日間だった。

 会見は誰もが予想した通り、棄権の受けてのものだった。

 理由は、右肩の痛み。今大会開幕前の会見では、「マイアミで痛めてしまって、なかなか治ってくれなくて」と言いはしたが、痛みの箇所には言及せず。これが、肩だったという。

「本当に出場を決めたのは、(開幕の)3日前くらい。毎日がテストのような感じで、正直、セット練習ができていなかったので、3セットで試合が終わればいいな、くらいの気持ちで来てたんです」
 
 それが結果は、1回戦から5セットの死闘。

「5セットやってしまったのが……もちろんしょうがないんですけど、それが多分……。身体がまだまだ慣れないものもあるし、あと、全身の筋肉痛はものすごかった」

 それでも試合が始まれば、勝利への欲が痛みを覆い隠す。だが第2セットが終わった時、現実的な状況を認識した。

「ちょうど休むタイミングで、一瞬アドレナリンも切れて。これが(セットカウント)2-0だったらやってますけど、あと3セット取らないといけないと考えた時に、さらに悪くしてしまうなと思い、止める判断をしました」

 その結末そのものには、当然、悔しさや不安もあるだろう。ただ4日間で戦った2試合、計7セットから持ち返る収穫も、当然ある。

「久しぶりに4時間(試合を)やると、今日も身体があまり動いてはくれなかった。ただ逆に取れば、このサーブとこの動きでも、ここまでプレーできるというのは、唯一ポジティブな点ではあるかな」

「テニスはけっこう良かった。この1~2カ月は、だいぶ自信をなくしていたのが、トップの選手と練習ができて、やれるなっていうのも感じて。緊張の中、ある程度試合もできていたので、収穫はすごいありました」

 その収穫を次に生かす日は、いつになるのか? 

 フィジカル面の不安は尽きないが、それ以上に希望の光を灯し、錦織は赤土を後にした。

現地取材・文●内田暁

【動画】錦織圭VSシェルトンの「全仏オープン」2回戦ハイライト

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