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海外テニス

大坂なおみが新コーチと目指すのは「全てのポイントで全力を尽くす」ことの先にある、アスリートとしての究極の高み

内田暁

2020.01.12

プロフェッサーと呼ばれるデータ重視の新コーチとともに、大坂は「全ての大会で優勝すること」を今季の目標に掲げる。(C)GettyImages

プロフェッサーと呼ばれるデータ重視の新コーチとともに、大坂は「全ての大会で優勝すること」を今季の目標に掲げる。(C)GettyImages

 例えば2018年のウインブルドンで、当時フィセッテが指導していたアンジェリーク・ケルバーは、大坂と対戦し完勝している。

 その時にフィセッテが授けた策は、「一球目からリスク覚悟でボールを深く打ち込み、なおみを守備に追い込むこと」だった。「それ以外に、アンジー(ケルバー)が勝つチャンスはなかった」とも彼は言う。つまりは今のフィセッテが大坂に求めるのは、自分が立てた“大坂対策”を、相手選手に取らせないことだ。

 そのような長期的な青写真を掲げたうえで、今大会の大坂と新コーチが立てた目標は、「試合ごとに調子を上げること。全てのポイントで、全力を尽くすこと」であった。それは昨年、世界1位やディフェンディングチャンピオンとしての重圧にさらされてきた彼女が、傷つきながらも学んだ真理だという。
 
「目の前のポイントに集中して戦った時は、いつも結果として勝っていた。特に東レPPOで学んだのが、たとえテニスのレベル的に100%ではなくても、自分を信じ全てのポイントでファイトするべきだということ」

 だから今年の目標は、不可能とはわかっているけれど、出場する全ての大会で優勝することなの――ことさら力む風もなく、彼女は目指す究極の高みを口にした。

 冒頭で述べた通り、今大会の敗戦後の大坂が冷静だったのは、これらの目標をおおむね達成できたからだ。

 手探りで挑んだ初戦では、不屈の闘志で知られるマリア・サッカリ相手に、終盤でプレーの質を上げ突き放した。2回戦は多少の波がありながらも自分のプレーを貫き、3回戦では、実力者のキキ・バーテンスの追い上げを、気持ちを立て直し振り切っている。

「準備期間が短かったことを思えば、試合をしながら調子を上げるしかないことはわかっていた」

 そう現状を客観視する大坂は、「だから、この時点での彼女(プリスコワ)との試合が厳しいものになるのはわかっていた」と言う。その上で、「今日は彼女のプレーが素晴らしかった。いいプレーができていたと思うし、良いシーズンのスタートが切れた」と、シーズン開幕戦を総括した。

 ディフェンディングチャンピオンとして迎える全豪オープンで、果たしてどのような気持ちになるかは「直前までわからない」。それでも彼女は、「私はオーストラリアが大好き。いつもこの国では、良いプレーができるから」と、ごく自然体で笑う。

 その表情や仕草からは、昨年のグランドスラム前哨戦で見られた、重圧の影は消えていた。

取材・文●内田暁

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