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海外テニス

なぜ禁止薬物検出のシナーは許されたのか? 元ATPドーピング責任者が見解「規則は文面通りに守られていた」<SMASH>

中村光佑

2024.08.22

シナー(右)は出場停止を免れ、陽性反応を示した事実も長く公表されなかった。ATPの元ドーピング責任者、イングス氏(左)は「ルールは完全に遵守されている」と語る。(C)Getty Images

シナー(右)は出場停止を免れ、陽性反応を示した事実も長く公表されなかった。ATPの元ドーピング責任者、イングス氏(左)は「ルールは完全に遵守されている」と語る。(C)Getty Images

「私は裁定の内容を読みましたが、規則は文面通りに守られていました。実際、シナーは暫定的に出場停止の処分が科されました。そして即日、彼の弁護士は彼に過失がないという証拠に基づき、暫定出場停止処分の早期解除を求める控訴を提出しました。このようなケースでは、審理を迅速に行なうのが特徴です」

「仲裁人はその控訴を受け入れ、出場停止処分を解除する決定を下しました。この件が法廷で全面的に審理されるまで、規則上、騒動の公表はできません。だから彼はプレーできたわけです。最終的に裁判所は証拠を全て検討し、シナーに過失はなかったと判断しました。そのため出場停止処分は科されませんでした。しかし彼は最初の検査で陽性反応が出た時点で自動的にポイントと賞金を失います。陽性反応に全く過失がないとされた場合でも、その措置は必然的に科されます。ルールは完全に遵守されています」
 

「この件はATPとは何の関係もありません。ITIAがサンプルを採取し、訴訟を起こします。スポーツ・リゾリューションが訴訟の準備をし、仲裁人を招集します。ATPは意図的に関与しませんでした。ITF(国際テニス連盟)も同様です。選手にとって、陽性反応をもたらす原因を見つけるのは通常かなり難しいのですが、今回の場合は原因が明白で、しっかりとした裏付けもありました。彼自身には非がないという説得力のある主張もありました」

 またシナーの異議申し立てが円滑に進んだことについて、イングス氏はトップ選手ならではの体制によるのではないかと推測する。「ここで重要なのが、問題を解決するための人材です。シナーには明らかに、迅速な審理の要請を即日作成するための、最高の弁護士を雇う人材がいます。そういう人材がそれほど多くない選手は、それを実行するまでに苦労するでしょう」

 すでにシナーは今回の不祥事についてSNSで自身の潔白を伝えているが、まだメディアでは説明していない。だが間もなく開幕する四大大会「全米オープン」では記者から多くの質問を受けることになるだろう。しばらくは混乱が続きそうだ。

文●中村光佑

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