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国内テニス

【全日本テニス】今大会で引退の36歳、伊藤竜馬!激闘を制して8強入り「精神的にはすごく良い状態」<SMASH>

内田暁

2024.10.11

百戦錬磨の元世界60位の伊藤は、競り合いながらも勝負の潮目を見逃さずに相手を一気に畳みかけて勝利を引き寄せた。写真:田中研治(THE DIGEST 写真部)

百戦錬磨の元世界60位の伊藤は、競り合いながらも勝負の潮目を見逃さずに相手を一気に畳みかけて勝利を引き寄せた。写真:田中研治(THE DIGEST 写真部)

 ベテランと呼ばれる年齢になってからは、若手選手たちの良き兄貴分として、相談に乗る機会も増えた。そのうち「大会に帯同してほしい」と請われることもあり、ここ数年は望月慎太郎らのコーチも兼任する。今大会の3回戦で対戦した住澤も、伊藤に助言を求めてきた一人だという。

 コーチの立場から見る試合コートは、異なる視座やテニス観を、彼に与えただろう。

「コーチングをした上で選手として戦っていると、より客観的に自分を見て、落ち着いてプレーできるようになった。頭の中でやろうと思ったことを、実際に行動に移せるようになった」

 指導者経験の効能を、伊藤自身もそう語る。住澤との対戦でも、そんな伊藤の“試合巧者”ぶりが存分に発揮された。

 第1セットのタイブレークでは相手にリードを許すも、ロブからスマッシュにつなげる空間を広く使うプレーで、流れを変えてセットを奪い去った。

 ファイナルセットでブレークバックした直後は、「チャンスがあるとしたら、この2ゲームだ」と見定め、たくみに相手のミスを誘った。体力切れのように見えた時間帯もあったが、それも試合の全体像を把握し、時に省エネモードに切り替えたため。
 
「精神的にも肉体的にもダメージがあったのは確かです。その中で、今できることをやろうとした時、ボレーを増やしてポイントを短かく終えたり、スライスで相手のリズム崩したり。自分の体力面も考慮して、うまくペース配分もできましたし……」

 冷静に勝因を振り返る伊藤は、「そこはやっぱり、今までの経験が生きたかなっていうのを、見せられた試合ではありました」と、照れた笑みを顔いっぱいに広げた。

「精神的にはすごく良い状態。一番テニスが楽しい感じで、あまり深く考えず、自分の好きなプレーをやれている」

 充実感を顔に滲ませ、伊藤が言う。キャリアの集大成と呼ぶに相応しいテニスを、大好きな有明コロシアムに描きなら、竜馬が行く。

取材・文●内田暁

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