ベテランと呼ばれる年齢になってからは、若手選手たちの良き兄貴分として、相談に乗る機会も増えた。そのうち「大会に帯同してほしい」と請われることもあり、ここ数年は望月慎太郎らのコーチも兼任する。今大会の3回戦で対戦した住澤も、伊藤に助言を求めてきた一人だという。
コーチの立場から見る試合コートは、異なる視座やテニス観を、彼に与えただろう。
「コーチングをした上で選手として戦っていると、より客観的に自分を見て、落ち着いてプレーできるようになった。頭の中でやろうと思ったことを、実際に行動に移せるようになった」
指導者経験の効能を、伊藤自身もそう語る。住澤との対戦でも、そんな伊藤の“試合巧者”ぶりが存分に発揮された。
第1セットのタイブレークでは相手にリードを許すも、ロブからスマッシュにつなげる空間を広く使うプレーで、流れを変えてセットを奪い去った。
ファイナルセットでブレークバックした直後は、「チャンスがあるとしたら、この2ゲームだ」と見定め、たくみに相手のミスを誘った。体力切れのように見えた時間帯もあったが、それも試合の全体像を把握し、時に省エネモードに切り替えたため。
「精神的にも肉体的にもダメージがあったのは確かです。その中で、今できることをやろうとした時、ボレーを増やしてポイントを短かく終えたり、スライスで相手のリズム崩したり。自分の体力面も考慮して、うまくペース配分もできましたし……」
冷静に勝因を振り返る伊藤は、「そこはやっぱり、今までの経験が生きたかなっていうのを、見せられた試合ではありました」と、照れた笑みを顔いっぱいに広げた。
「精神的にはすごく良い状態。一番テニスが楽しい感じで、あまり深く考えず、自分の好きなプレーをやれている」
充実感を顔に滲ませ、伊藤が言う。キャリアの集大成と呼ぶに相応しいテニスを、大好きな有明コロシアムに描きなら、竜馬が行く。
取材・文●内田暁
【画像】伊藤竜馬が苦しみながらもベスト8進出!女子シングルス決勝は石井さやかvs齋藤咲良!!|全日本テニス選手権99th 第7日
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「コーチングをした上で選手として戦っていると、より客観的に自分を見て、落ち着いてプレーできるようになった。頭の中でやろうと思ったことを、実際に行動に移せるようになった」
指導者経験の効能を、伊藤自身もそう語る。住澤との対戦でも、そんな伊藤の“試合巧者”ぶりが存分に発揮された。
第1セットのタイブレークでは相手にリードを許すも、ロブからスマッシュにつなげる空間を広く使うプレーで、流れを変えてセットを奪い去った。
ファイナルセットでブレークバックした直後は、「チャンスがあるとしたら、この2ゲームだ」と見定め、たくみに相手のミスを誘った。体力切れのように見えた時間帯もあったが、それも試合の全体像を把握し、時に省エネモードに切り替えたため。
「精神的にも肉体的にもダメージがあったのは確かです。その中で、今できることをやろうとした時、ボレーを増やしてポイントを短かく終えたり、スライスで相手のリズム崩したり。自分の体力面も考慮して、うまくペース配分もできましたし……」
冷静に勝因を振り返る伊藤は、「そこはやっぱり、今までの経験が生きたかなっていうのを、見せられた試合ではありました」と、照れた笑みを顔いっぱいに広げた。
「精神的にはすごく良い状態。一番テニスが楽しい感じで、あまり深く考えず、自分の好きなプレーをやれている」
充実感を顔に滲ませ、伊藤が言う。キャリアの集大成と呼ぶに相応しいテニスを、大好きな有明コロシアムに描きなら、竜馬が行く。
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