シナーという姓も、細身で長身、赤毛という身体的特徴も“ラテン的な”イタリア人のステレオタイプとはほど遠い。それはイタリア最北端のアルプス山岳地帯に位置するアルト・アディジェ地方のオーストリア国境に接した山村の出身であることと結びついている。
アルト・アディジェはイタリアで唯一、イタリア語ではなくドイツ語を第一言語とし、文化的にもオーストリアの影響を強く受けた特殊な地方。「ヤンニク」という名前も「シンネル」という姓と同様に、この地方ではごく一般的なものだ。一部で言われているような、フランスのテニス選手ヤニック・ノアにちなんでいるわけではまったくない。
山小屋の管理人を務める両親のもとに生まれ、子供の頃から誰もがスキーをたしなむ環境で育ったことから、当初はスキーをメインスポーツとしていた。7歳の時には大回転で世代別のイタリア・チャンピオンにもなっている。
その傍ら、純粋な趣味として始めたテニスに徐々に「ハマった」シナーは、13歳の時にイタリア有数のテニス育成センターに通うため、地中海沿岸のジェノバに近いボルディゲーラに単身移って寮生活を始め、本格的にテニスに打ち込むことになる。
彼にとっては第二言語であるイタリア語を身につけたのも、それまではほとんど興味がなかったサッカーを見るようになり、ルームメイトが応援していたという理由でミラニスタ(セリエA、ACミランのファンの総称)になったのも、育成センターでの寮生活を通してだった。
2015年に弱冠14歳でプロサーキットにデビューすると、18歳になった2019年にはUー21世代の最高峰トーナメント「NextGen ATPファイナルズ」で優勝し、ATPランキングでもトップ80入り。そこから毎年着実にステップアップして、22歳で世界のトップを争うテニスプレーヤーへと成長した。
サッカー界におけるリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)とクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)がそうだったように、プロテニス界もこの15年間、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ジョコビッチというビッグ3が他を寄せ付けずにタイトルを独占してきた時代が終わり、本格的な世代交代の時代を迎えようとしている。
シナーは、1世代上のメドベージェフやアンドレイ・ルブレフ(ロシア)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、そしてとりわけ2歳年下のカルロス・アルカラス(スペイン)らと、その後継者の座を争うひとり。今回の全豪優勝が、これから始まる輝かしいキャリアの幕開けとなることを、イタリア中が期待し応援している。
文●片野道郎
【関連記事】世界4位シナーが全豪OPで四大大会初優勝!メドベージェフに2セットダウンから大逆転勝利「本当にハッピースラムだと思う」<SMASH>
アルト・アディジェはイタリアで唯一、イタリア語ではなくドイツ語を第一言語とし、文化的にもオーストリアの影響を強く受けた特殊な地方。「ヤンニク」という名前も「シンネル」という姓と同様に、この地方ではごく一般的なものだ。一部で言われているような、フランスのテニス選手ヤニック・ノアにちなんでいるわけではまったくない。
山小屋の管理人を務める両親のもとに生まれ、子供の頃から誰もがスキーをたしなむ環境で育ったことから、当初はスキーをメインスポーツとしていた。7歳の時には大回転で世代別のイタリア・チャンピオンにもなっている。
その傍ら、純粋な趣味として始めたテニスに徐々に「ハマった」シナーは、13歳の時にイタリア有数のテニス育成センターに通うため、地中海沿岸のジェノバに近いボルディゲーラに単身移って寮生活を始め、本格的にテニスに打ち込むことになる。
彼にとっては第二言語であるイタリア語を身につけたのも、それまではほとんど興味がなかったサッカーを見るようになり、ルームメイトが応援していたという理由でミラニスタ(セリエA、ACミランのファンの総称)になったのも、育成センターでの寮生活を通してだった。
2015年に弱冠14歳でプロサーキットにデビューすると、18歳になった2019年にはUー21世代の最高峰トーナメント「NextGen ATPファイナルズ」で優勝し、ATPランキングでもトップ80入り。そこから毎年着実にステップアップして、22歳で世界のトップを争うテニスプレーヤーへと成長した。
サッカー界におけるリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)とクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)がそうだったように、プロテニス界もこの15年間、ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ジョコビッチというビッグ3が他を寄せ付けずにタイトルを独占してきた時代が終わり、本格的な世代交代の時代を迎えようとしている。
シナーは、1世代上のメドベージェフやアンドレイ・ルブレフ(ロシア)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、そしてとりわけ2歳年下のカルロス・アルカラス(スペイン)らと、その後継者の座を争うひとり。今回の全豪優勝が、これから始まる輝かしいキャリアの幕開けとなることを、イタリア中が期待し応援している。
文●片野道郎
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