昨年９月に現役を引退した男子テニス元世界ランク１位のロジャー・フェデラー氏（スイス／42歳）が、ATP（男子プロテニス協会）が運営するポッドキャストに出演。その中で20歳にして凄まじい活躍を遂げている世界２位のカルロス・アルカラス（スペイン）を大いに称賛した。

　すでに12個のツアータイトルを獲得しているアルカラス。昨季には自身初の年間１位も達成し、驚異的な成長スピードにはファンからも感嘆の声が絶えない。いずれは史上最強の選手になるのではないかとも予想されているアルカラスに対し、テニス界の英雄も思わず「素晴らしい」と舌を巻いた。

　７月のウインブルドンで四大大会２度目の優勝を飾ったアルカラスだったが、現在は約３カ月ツアー優勝からは遠ざかっている。アジアシリーズに入ってからも中国オープン(ATP500)はベスト４、翌週の上海マスターズ（ATP1000）は４回戦敗退に終わり、少々苦戦気味だ。

　だが現役時代にのべ1500試合以上を戦ったフェデラー氏は「負けが続いても気にしすぎない方がいい」とし、改めて若きニューヒーローを次のように絶賛した。

「カルロスはここまで、可能な限りのパフォーマンスを見せてくれている。上海のようにいいプレーができないこともあるだろうが、素晴らしい活躍だと思う。彼には明らかに信じられないような未来が待っている。もちろん、ラファ（ナダル）、ノバク（ジョコビッチ）、私、そしてアンディ（マリー）と、我々はどの世代にも毎週最高のテニスを披露してくれることを期待しているが、それを実現するのは難しい」
  「だからカルロスは偉大だよ。彼はまだ若いが、彼が達成してきたことは全て素晴らしいものだ。クレーやハードだけで活躍しているわけではない。（芝の）ウインブルドンでも決勝でノバクに勝った。それは本当にただ事ではない。彼は（今の年齢で）そこまで強さを証明する必要はなかったんだけど、彼のキャリアに大きな功績がもう１つ新たに加わった。非常に印象的な選手だね」

　実はジョコビッチがウインブルドン決勝後の記者会見で自身の大会５連覇を阻止したアルカラスに「ビッグ３（フェデラー、ナダル、ジョコビッチ）全員の能力を併せ持っているような選手だ」と賛辞を送っていたが、フェデラー氏はアルカラスのスキルをこう評価している。

「（バックハンドよりも）フォアハンドの方が少々パワーがあり、ラファのようなスタイルが垣間見える。でもテクニックの面では僕みたいな要素が強いかもしれない。明らかに彼はドロップショットやスライスを使っているし、ラファのようにコートの後方からプレーすることもできる」

「そして、彼はノバクに匹敵する守備スキルも持っている。ただその点に関してはノバクが明らかにエリートレベルにいて、長年そのスキルを培ってきたノバクは孤高の存在だ。クレーのラファみたいにね。ノバクにはノバク、ラファにはラファのスタイルがあるように、カルロスにはカルロスのスタイルがあるからビッグ３の能力が融合されているというのはフェアではない。僕は彼らが一人ひとり個性を持っているのが好きだ」

　フェデラー氏にここまで言わしめるアルカラスの今後が楽しみだ。この先もさらなる飛躍を期待したい。

文●中村光佑

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