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海外テニス

アルツハイマー病の祖母を持つドレイパーの知られざる啓蒙活動「この病気は自分のよく知る人を完全に奪ってしまう」<SMASH>

中村光佑

2023.12.10

祖母が自分たち家族を認識しないことが何よりも悲しいと語るドレイパー。アルツハイマー病協会の支援に力を入れている。(C)Getty Images

祖母が自分たち家族を認識しないことが何よりも悲しいと語るドレイパー。アルツハイマー病協会の支援に力を入れている。(C)Getty Images

 男子テニス界期待の若手として注目を集める21歳のジャック・ドレイパー(イギリス/世界ランク61位)が母国の公共放送『BBC』のインタビューに登場。そのなかで自身の祖母がアルツハイマー病を患っていることを告白するとともに、同疾患への意識を高めるための啓蒙活動に取り組んでいると明かした。

 ドレイパーは数年間一緒に住んでいた祖母のブレンダさんが、当時70歳だった2015年にアルツハイマー病と診断されて以降、「その病気とは自分も密接に関わっている」と言う。彼を含め家族全員が「アルツハイマー病と共存している状態」であり、「主に父親が祖母の介護をしている」と現況を説明。

 元テニス選手でコーチとしての経歴も持つブレンダさんの症状は非常に重く、「愛する人たちのことをほとんど覚えていなくて、僕が誰なのか、テニスでどんな功績を残したのかもほとんど覚えていない」そうだ。

「まだ病気の初期段階や中期段階ではコミュニケーションを取ったり、歌を歌ったり、リズムを取ったりすることもできていたし、面白くて朗らかでもあった」祖母がその10年後には何もできなくなり、「容態の悪化により自分を含む家族のことを全く認識していない今の状況」が何よりもつらいと、ドレイパーは率直な心境を吐露する。
 
「祖母の介護を担う父は、今でも祖母をローハンプトン(イギリスの都市)のナショナルテニスセンターに連れて行き、僕のトレーニングを見守ってくれているが、彼女は僕が誰なのかがわからない。そして、もし僕のテニスの試合がテレビで放送されたら、父は祖母にそれが僕だと伝えるが、彼女はすでにそれすらも認識できない。

 おそらくそれが僕と僕の家族にとって最も悲しいことだ。僕たちのことを認識しなくなったり、コミュニケーションが取れなくなったりする。祖母は僕のテニス人生における偉大なサポーターだった。いつも僕のそばにいてくれたよ」

 アルツハイマー病の怖さを知ったドレイパーはツアーを転戦しながら、母国の「アルツハイマー病協会」への支援活動に取り組んでいる。「アルツハイマーは自分のよく知る人を完全に奪ってしまう病気だ。この病気の怖さと、診断された本人だけではなくその家族や友人、介護者にも大きな影響を与えることを知った。それが、僕がアルツハイマー病協会を支援すると決断した理由だ。アルツハイマー病による惨状を終わらせるための治療法を探ることにも情熱を注いでいる」と簡潔に説明した。

「祖母が僕のことをとても誇りに思ってくれている」ことを信じてこれからも精進していきたいと意欲を示すドレイパー。受け入れがたい現実と向き合いながらも過酷なツアーで戦う新進気鋭の21歳を今後も応援していきたい。

文●中村光佑

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