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海外テニス

【雑草プロの世界転戦記17】ヨーロッパで培われる価値観は世界基準。トップになる選手の歩みも身近に見られる<SMASH>

市川誠一郎

2023.12.23

ヨーロッパで活動していると、世界のトップ選手と同じ場所で練習したり、言葉を交わす機会が普通にある。そうして世界基準の視点が自ずと養われる。(C)Getty Images

ヨーロッパで活動していると、世界のトップ選手と同じ場所で練習したり、言葉を交わす機会が普通にある。そうして世界基準の視点が自ずと養われる。(C)Getty Images

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。

―――◆―――◆―――

 ヨーロッパにいて感じるのは、選手の価値観の違いです。

 日本に限らず、アジア、オーストラリアなどの文化圏の選手は、数字や周りを気にする傾向が強いと感じます。それは彼らを育んだ文化や指導方法によるところが大きいのではないでしょうか。

 ヨーロッパのコーチングは結果だけではなく、積極的な失敗を評価する、どうプレーしたか、取り組んだかを評価する指導が多いのです。日本ほど周りを気にせず、人と違う個性を認める文化的土壌が背景にあります。

 試合をたくさんこなしている中でも、一つひとつの結果には一喜一憂しすぎず、やるべきことにしっかり取り組めているかを見つめることで、より価値ある試合経験を積めるように感じます。逆に、たくさん試合をしているにもかかわらず、こうした毎回の試合結果の有意義な受け止め方を見つけられない選手は、悪い結果による精神的な過酷さにさらされて、キャリアが短くなる傾向があると思います。
 
 ヨーロッパでは周囲にグランドスラムに出場している選手、グランドスラムチャンピオンを教えた経験のあるコーチなどが至る所にいます。そんなレベル感が当たり前です。

 以前書いたように、ジョコビッチやトップ10になるような選手は16歳でITFのプロ大会で優勝していますが、そうした選手とジュニア期に同じ大会に出場したり、友達が彼らと対戦したり、ということがしょっちゅうあります。例えば、僕がよく練習する選手はほんの2年前にアルカラスと6-4、6-7、6-7の激戦を戦っています。つまり、世界のトップがより身近に感じられる環境にあるのです。

 日本では全日本選手権に出場している選手がすごい選手であり、プロを見れば簡単に話しかけづらいほどの存在になってしまいます。グランドスラムに出場している選手をコートで見たり話す機会などほとんどないでしょう。でもこちらでは彼らに近づきがたい雰囲気は全くなく、文化的にも普通に友達として彼らと話すことができるし、練習するチャンスもあります。

 グランドスラムで優勝する選手がジュニア期にどんな大会に出ていて、何歳でプロツアーに移行し、何歳で優勝していくのか? チャンピオンになっていく選手の歩みもごく身近に見ることができます。

 彼らが近くにいるために、その世界基準のイメージを持つことができる――それもヨーロッパでテニスをする大きなメリットの一つです。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

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