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海外テニス

女子テニスのカサキナが男女賞金平等論に異議!「男子からお金を奪いたいのではない」と女子ツアー単体の待遇向上を訴える<SMASH>

中村光佑

2023.12.28

カサキナはツアーの男女賞金同額にはこだわらない。純粋に女子ツアーの賞金が上がることを望んでいる。(C)Getty Images

カサキナはツアーの男女賞金同額にはこだわらない。純粋に女子ツアーの賞金が上がることを望んでいる。(C)Getty Images

 近年のテニス界は男女差別撤廃への取り組みが進んでおり、WTA(女子テニス協会)創設者である元世界女王のビリー・ジーン・キング氏(アメリカ/80歳)を中心に広がりを見せてきた。2007年からは全ての四大大会において男女の賞金総額が同額となっている。

 そうした中でWTAは今年6月、トップイベントで男子と同等の賞金を付与する計画を明らかにした。WTA1000、500では、男子と合同開催の大会は27年までに、別開催の大会は33年までに同額賞金の実現を目指すとのことだ。

 現状ツアー大会では依然としてジェンダーギャップが非常に大きく、とりわけそれは選手の獲得賞金に表れている。海外メディア『UBITENNIS』によると、23年8月に男女共催された米ワシントン大会(ATP500/WTA500)では男子の優勝賞金が35万3,455ドル(約4,851万円)だったのに対し、女子優勝賞金は12万150ドル(約1,697万円)と約3倍もの差があった。

 このような差別的な扱いに違和感を覚えている現役選手は男女問わず多い。現世界女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)はかねてから「賞金が平等になったほうがいいと思う」と主張。デニス・シャポバロフ(カナダ)やアンディ・マリー(イギリス)ら男子選手も賞金の男女平等に賛意を示している。

 こうした声に異議を唱えたのが、女子世界18位のダリア・カサキナ(ロシア/26歳)だ。先日英紙『Telegraph』のジャーナリスト、エリス・コスティク氏の取材を受けたカサキナは「賞金平等の議論は非論理的で意味がない」と一刀両断。そしてこう続けた。

「男性と女性のスポーツを比較することは全く意味がない。なぜそんな声を上げているのか理解できない。私たちは男子と女子で互いに競争しているわけではない。賞金の平等というテーマはテニス選手が考え出したものではないと思う。私たちはそれが不可能であることは認識している」
 
 実のところ女子ツアーでは23年に42人の選手が100万ドル(約1億4,100万円)以上を稼いだ一方、トップ200圏外の選手で19万1,000ドル(約2,700万円)以上稼いだ選手はいなかった。なおこれらの数字には税金や旅費、コーチ費用は考慮されていない。

 こうした事実を踏まえ、カサキナは男女賞金平等よりも、ランキング下位選手を含む全女子プレーヤーが長く現役を続けるための給与を確保できるようにすることに重点を置くべきだと主張する。最後には改めて男子ツアーと賞金額で争う必要はないと強調した。

「頑張りながら最高のものを望んでいる時に、もっとお金をもらいたいと思うのはごく普通のこと。組織に支払い能力がある場合はなおさらよ。それこそが私たちが戦っている目的でもある。誰も男子ツアーからお金を奪いたいとは思っていない。

 無論私たちは、この状況を放置しておくつもりはない。トップ50はまだいいけど、残りの人たちは何とか生き残っているのが現状。男子ツアーはその点で私たちより状況は良いと思う。WTA250、125の賞金はとんでもなく低い。税金やその他の出費を全て払ったら、生きていくためのお金は何も残らない」

 カサキナは女子ツアー単体で状況を打開すべきだと考えているのだろう。ジェンダーレスの風潮が強い中で、カサキナと同じ考えを持つ選手がどれほどいるのか気になるものだ。

文●中村光佑

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