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海外テニス

勝利の鍵となったリターンでプレッシャーをかけ続けた大坂なおみ、スライディングを習得し苦手の芝を克服できるか<SMASH>

内田暁

2024.07.02

ウインブルドンで6年ぶりに初戦突破を果たした大坂。競った展開だったが、重要な局面で集中力を上げ勝利をものにした。(C)Getty Images

ウインブルドンで6年ぶりに初戦突破を果たした大坂。競った展開だったが、重要な局面で集中力を上げ勝利をものにした。(C)Getty Images

 1時間31分に及ぶ、起伏に富んだフルセットの戦いに終止符を打ったのは、ディアーヌ・パリ(フランス/世界ランク53位)のダブルフォールトという、やや意外なポイントだった。

 パリは打った直後には敗戦を悟ったのだろうか、セカンドサービスがネットを叩くと同時に、握手のためにネットへと歩み寄る。そして勝者は小さく拳を握りしめると、やはり淡々とネット際へと向かっていった。

 スコアは、6-1、1-6、6-4。5年ぶりに出場するテニスの四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/芝)で、大坂なおみ(113位)は生みの苦しみを味わいながらも、価値ある白星をつかみ取った。

 一年前の、この時期――。大坂は文字通りの、生みの苦しみの最中にいた。

「実は試合前に、“一年前の出来事”をまとめたフォトアルバムを見ていたの」と、試合後に大坂が明かす。

 そこに写っていたのは、病院にいる自分の姿。愛娘のシャイちゃんが誕生したのは、1年前の7月2日のこと。

「あの時の私が考えていたのは、ひたすら無事でいることだった。正直、出産後のことは皆目見当もつかなかった」

 一年前の自分たちに寄りそうように、大坂は優しく笑った。
 
 そこからの月日の流れは、「ものすごく早かった」と大坂は言う。今の彼女は、8月末にニューヨークで開幕する全米オープン(ハード/四大大会)を明確なピークに見据え、猛スピードで復帰の道を駆けている道中だ。

 最後にウインブルドンを訪れた5年前と今とでは、「人としても選手としても、驚くほどに変わった」と大坂は自己分析する。ケガや重圧のために、出場を見送ってきたウインブルドンに出場したのも、変わったことの一つ。今季は可能な限り多くのツアー大会に出場し、その旅路の多くを娘とも共有している。初めて歩く娘の姿も、ヨーロッパ遠征中に目撃した。

 以前から「あなたのプレーは芝向き」と関係者にも言われていた大坂が、芝に苦手意識を抱く主な要因はフットワークにある。その大坂が今大会の開幕前、興味深い言葉を残した。

「芝の上で、スライディングするのを試しているの」
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