ラグビー

「日本だと細くて白くてかわいいのが理想という中で…」女子ラグビー代表・弘津悠がW杯で示す“新しい女性像” 「ありのままでいいんだと」

向風見也

2025.08.30

センターを務める弘津。自身のプレーを通して、「日本の女性に勇気を与えたい」と語る。(C) Getty Images

 ワールドカップで勝ちたい理由は。

 そう問われたのは弘津悠。女子15人制ラグビー日本代表として参加中の一大イベントへ、こう思いを馳せた。

「日本で女子がラグビーをすることに、本当に珍しいという見方をする方はまだまだたくさんいると思っています。私自身も『え、女子なのにラグビーするん?』とか、『海外の人に体格で勝てないだろう』と言われて…。でも、ラグビーをしている人って、強くて、優しくて、本当にかっこいい。そういう魅力を、(ワールドカップでの)熱いプレーを通して見てもらって、『なんや、女子だってラグビーしていいやん』『やりたいこと、やっていいやん』と感じてもらえるようにしたいです」
 
 兵庫県出身。高校までバスケットボールと両立の24歳は、7人制ラグビーでも代表選手となっている。多くの国際大会へ出るなか、各国でラグビーをする女性の居住まいに感銘を受けた。

「日本だと細くて、白くて、かわいいのが理想という感じのなかで生きてきて、ほとんどの女子ラグビー選手が『…私たち、ごついよね』と、卑下するわけではないけど、一歩引いてしまう自分もいて。でも、海外の女子選手は皆、タンクトップを着て、男性コーチとも対等に話している。そういう姿、(最初に見た)当時はびっくりしました。ラグビーをしているのが誇らしくなったし、堂々とできるようになりました。ありのままでいいんだと、ラグビーが教えてくれた」

 自分たちのパフォーマンスが全国の女性の自己肯定感に影響があったら嬉しい。

「世界の大会で私たちが勝つことで、新たな女性像みたいなものを日本に示せるんじゃないかなと。多くの女性に勇気を与えられるようなプレーがしたいです」

 父の英司さんは現在、リーグワンのコベルコ神戸スティーラーズでチームディレクターを務める。現役選手だった1995年には男子15人制日本代表として南アフリカでのワールドカップを経験。父娘2代にわたっての大会出場が叶っている。

 メディアはしばしその関係性に注視し、その手の質問があるたびに目下の代表選手は笑う。

「お父さんは自分のことをあまり話さない。ほとんどプレーも見たことがないです。周りの人からは『昔、こんな選手だったんだよ』とは聞きますけど」

 イングランドで本番を迎えると、厳しい現実を突きつけられた。

 現地時間8月24日。8強入りへ重要と見られた初戦で、アイルランド代表に42―14で敗れた。

 自身はインサイドセンターで先発して前半29分のトライ、度重なる好タックルで気を吐くも、集団としては猛練習の成果を発揮するに至らなかった。

 同31日には強大なニュージーランド代表と激突。挑む日本代表にとっては、心身の充実が目標達成への最低条件となりそうだ。

 そう言えば弘津は、悔しい内容の試合の後に父からLINEでこんな文面をもらったことがある。

<いい選手はさらっと切り替えるで>

 かつてあった大一番の直前には、端的な一言も受け取っている。

<普通のプレーはあかんで>

 アピールの機会は残されている。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)

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