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ラグビー

「世界一のロックになりたい」23歳ディアンズ、“人生初キャプテン”の一戦でジャパンを勝利へ導く大仕事【ラグビー・PNC】

向風見也

2025.09.01

人生で初めてキャプテンを務めたというディアンズ。日本代表を見事に勝利に導いた。(C) Getty Images

人生で初めてキャプテンを務めたというディアンズ。日本代表を見事に勝利に導いた。(C) Getty Images

 選手入場。先頭に立つワーナー・ディアンズは国歌斉唱のための定位置に立つと、後ろをついてきた仲間を微笑んで迎え入れる。

 8月30日、宮城のユアテックスタジアム仙台。ラグビー日本代表で初めて主将を務める。バスケット経験もある本人曰く、「他のスポーツも含め、キャプテンをやるのは人生で初めて」である。

 7月までのキャンペーンでその重責を担ったリーチ マイケルは今回、個人的事情で選外。これまで2度のワールドカップでも船頭役を務めた36歳が代役に推したのが、自身の所属する東芝ブレイブルーパス東京にいた2人だった。

 そのうち原田衛はコンディション調整中も、もうひとりの身長201センチ、体重117キロの23歳は持ち場のロックで先発。環太平洋諸国、北米大陸勢とのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)の初戦で、カナダ代表をにらんだ。
 
 序盤は手こずった。世界ランクで11位下回る24位の相手を前に、チームは攻め込んでからのエラー、所定の立ち位置よりも前でプレーするオフサイドの反則を重ねた。競技の肝となる接点を圧倒しながら17―10と競ったままハーフタイムを迎えたのは、自滅の傾向があったからだ。

 苦境を乗り越えるべく、ディアンズがしたのはシンプルなことだ。

 態度で勝利を手繰り寄せた。

 自陣の深い位置からラインブレイク、オフロードパスを重ねて勢いをもたらしたのは10得点目を挙げて間もない前半12分頃。10-10と同点とされ、かつイエローカードで数的不利のあった36分頃には、幾度も接点周りでの突進役を買って出た。

 続く38分。敵陣ゴール前中央で身をかがめた。防御の壁に衝突し、勢いよく敵陣ゴールラインを割った。直後のゴールもあり17―10と勝ち越した。

「チームでいいアタックができたからトライになった」

 さらに点差を広げるきっかけも、この人が作った。

「一人ひとりでプレーしている。全員のためにプレーしよう」と仕切り直していた後半の13分頃、自陣10メートルエリア左で向こうの走者を羽交い絞め。味方とともに攻守逆転。同僚の好キックもあり、好機を広げた。同15分、24-10。そのスコアの直後にも、金髪の5番はキックの捕球から豪快に走っている。

 続く25分の34点目に繋がるモールでも、敵の妨害を阻止し、味方の押しを促す出色の仕事ぶり。スクラムでのプッシュ、ラインアウトの指揮といった通常のタスクも全うした。

 終盤には倒れ込み、足へのテーピングが必要な瞬間もあったが、当の本人は「ちょっとひねっただけ。ドクターが『ちょっとでも痛かったら代える』と言っても、『大丈夫です』と」。約9年ぶりに復帰して2季目となるエディー・ジョーンズヘッドコーチも、57―15で勝つまで交代させなかった。

「(冒頭は日本語で)センセイ、『モンダイナイ』。ダカラ、モンダイナイ。…初めて主将をするゲームで最後まで戦い、勝つ経験をさせたかった部分もあります」

 中学2年で来日。父のグラントさんがプロのS&Cコーチとして日本の現NECグリーンロケッツ東葛に勤めだしたためだ。

 母のターニャさんが故郷のニュージーランドでネットボールの代表選手だったなか、息子が目指したのは異国のナショナルチームだった。流経大柏高から大学を経ずにブレイブルーパスへ入り、19歳で初代表を記録。23年にワールドカップ初出場を経て、いまに至る。

「(主将経験は)自分のキャリアにとって大きなステップ。楽しみです」

 ジャパンはまもなく渡米し、プールフェーズ2戦目のアメリカ代表戦、さらには上位国のひしめくファイナルラウンドを見据える。

 12月時点での世界ランクが2027年のワールドカップオーストラリア大会の組み分けに影響するだけに、結果にこだわる。リーチのいない若きスコッドにあって、「世界一のロックになりたい」と謳う若者の役目は小さくない。

構成●THE DIGEST編集部

【動画】ディアンズが初キャプテン! 日本代表がパシフィック・ネーションズカップ初戦のカナダ戦を制す!
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