ラグビー

「8年間ずっと代表に行っていたんですけど…」姫野和樹が見据える3度目のW杯 リーグワンでの失地回復から目指す檜舞台

向風見也

2025.12.12

今季も主将としてヴェルブリッツを支える姫野。(C) Getty Images

 姫野和樹がノートとペンを手に取った。

 31歳。ラグビー選手として今後のキャリアを考え、思いを書き出した。

 
「競技ができる時間はだんだんなくなっている。そう考えた時に、ラグビーを楽しみたいよねと。経験がある選手として期待されているし、いろんなプレッシャーが背中にのしかかる。でも、まず、ラグビーという競技の何が好きなのか、何が楽しめるのか。それを考え、自分のプレーにフォーカスしたい。そういうマインドセットでやっています」

 身長187センチ、体重109キロ。突進とボール奪取に燃えるフォワード第3列だ。

 中1で楕円球と出会ったこの競技の申し子は、所属するトヨタヴェルブリッツで1年目の2017年度から主将を務め、これから始まる25年度でもその座を担う。

 その立場を理解しつつ、まずは己の気持ちに倣う。

「何のしがらみのない子どもの頃の感覚を大事にしたいなと。主将をやると周りを見ないといけない。それももちろんやるんですけど、まずは、自分のラグビーに重きを置く。残りのラグビー人生は、そうしようかなと」

 失地回復を目指している。

 ニュージーランド代表125キャップのアーロン・スミスら豪華陣容を誇りながら、前年度は国内リーグワン1部で12チーム中10位と低迷していた。

 意識するのは「継承と進化」だ。元ニュージーランド代表指導陣のスティーブ・ハンセンヘッドコーチが球をスマートに動かそうとするのを尊重しつつも、まず、クラブが本来得意だった簡潔なフィジカル勝負にこだわりたいと語る。

「自分たちがもともと持っているヴェルブリッツの強みを継承していく。その強みが何なのかをリーダー陣で伝えてきたし、皆が誇りを持てるようになってきました。やっぱり、トヨタのラグビーはフォワードが強くないといけない。今年はだいぶ、スクラムもラインアウト(フォワードが担う攻防の起点)もやり込んでいます。そこへ、スペースを早く見てそこに(ボールを)動かすという進化を付け加えられたら」
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「あまり先のことばかりを考えてもしょうがない。いまはリーグワンでトヨタを勝たせる」