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南米勢初の金メダル、カーニバルの熱狂をしのぐ一大事「単なるスキーヤーからブラジルの魂に」元サッカー少年が雪山で成し遂げた前代未聞の快挙【冬季五輪コラム】

THE DIGEST編集部

2026.02.20

アルペンスキー大回転で、冬季五輪史上ブラジル初、南米勢初の金メダルを獲得したブローテン。(C)Getty Images

アルペンスキー大回転で、冬季五輪史上ブラジル初、南米勢初の金メダルを獲得したブローテン。(C)Getty Images

 ブラジル人にとって何よりも大事なもののひとつが、カーニバルだ。

 いまは2月。まさにカーニバルのシーズンである。サンバチームが街に繰り出し、国中のあらゆる場所で祝祭が繰り広げられている。しかしそんな熱狂をもしのぐ出来事があった。冬季オリンピックでのブラジル史上初の金メダル。ルカス・ピニェイロ・ブローテンが大回転で表彰台の一番高い場所に立ったのである。

 雪のないブラジルで冬季オリンピックの知名度はほとんどない。そんな太陽の国で、スキーが初めて大きな注目を集めた。カーニバルのパレードのライブ中継が、ルカスの大回転のためにすべてが中断されたのだ。それはまさに歴史的な瞬間と言ってもいい。リオの太陽が、氷上の祭典を見るために立ち止まった。

 ブラジルだけでなく、南米においても、スキーで金メダルを手にした選手は彼が初めてだ。そんな前代未聞の快挙を成し遂げたルカスとは、いったい何者なのだろうか?

 ルカスはノルウェーのオスロで、ノルウェー人の父とブラジル人の母の間に生まれた。3歳の時に両親は離婚。ルカスは母とサンパウロに移住した。その後、親権を得た父とともにノルウェーで生活。休暇のたびにブラジル・サンパウロの母を尋ねた。

 母はルカスに深い愛情とポルトガル語とブラジルの文化を教え、国民料理フェイジョアーダ(黒豆や豚肉、牛肉を煮込んだ料理)を振る舞った。他のブラジルの少年のようにサッカーに熱を上げ、サンパウロFCを応援し、ロナウジーニョの大ファンになった。

「5歳か6歳の頃、ロナウジーニョのビデオを見てサッカーへの愛が芽生えたんだ。ブラジルにいない時も父のパソコンでテクニックやボールタッチを見て、いつもブラジル選手のジョゴ・ボニート(美しいプレー)を楽しんでいた」

 
 子供の頃、ルカスは「世界最高のサッカー選手になる」と宣言していたという。もしそのままサッカーを続けていたら、別の特別な物語が出来上がっていたかもいれない。

 ルカスの父はスキーの指導者であり、彼もまたスキーを始めた。しかし当初はあまりスキーに夢中というわけではなかったようだ。

「ノルウェーの子どもはとても早くからスキーの練習を始める。ノルウェーのアルペンスキーはブラジルのサッカーのようなもの。でも僕の場合、スキーが好きではなかった。寒いし、服やブーツ、装具が山ほどあって足が痛くなる。ビーチや太陽、海が好きだったのに、どうしてアルペンスキーヤーになったのか自分でも分からないんだ」

 2025年に放送局『ESPN Brasil』の番組「Bola da Vez」でこのように語っている。

 本格的にスキーを始めたのは、9歳の頃。ノルウェーのクラブ「バールムスSK」に所属し、19年のジュニア世界選手権で4位と11位に終わり、スーパー大回転で銀メダル、複合で銅メダルを獲得した。ワールドカップで通算6勝を挙げており、スラロームで4勝、大回転で2勝を挙げている。表彰台に登った数ならば計22回だ。22年北京オリンピックにはノルウェー代表として出場している。

 
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