8勝0敗。こんな日本代表は、これまで見たことがない。
2026年バレーボールネーションズリーグは、2週を終えた時点で日本が無敗を維持している。これほど素晴らしいスタートは日本男子バレーの歴史でも前例がない。
VNLのような大会では、スコアの数字だけが重要なわけではない。「どこに勝ったか」がより大きな意味を持つ。だが日本はその点においても、非常に価値のある成績を収めている。
中国で行なわれた第1週では、今大会最大のサプライズチームのひとつであるウクライナを3-0で圧倒し、その後は世界の超強豪ポーランドも3-2で撃破。中国とスロベニアにも勝利すると、続くフランスでの第2週では、セルビア、イラン、アメリカを下し、さらに開催国フランスとの激闘を3-2で制した。
昨年フィリピンで開催された世界選手権(トルコとカナダにストレート負け、3戦目でリビアに勝利も1勝2敗で予選リーグ敗退)で大きな失望を味わったチームとは思えないほど、日本代表は安定し、充実した戦いを続けている。
VNLでの快進撃がいかに特別なものなのかは、大会の歴史を振り返れば、日本がどこからここにたどり着いたのかを振り返ればよくわかる。
かつての日本は長年にわたり、世界の強豪との間には大きな格差があった。10位以下で大会を終えることも決して珍しくはなかった。大会名がまだ"ワールドリーグ"だった時代、日本の成績は最高でも6位止まりだった。記憶に残る出来事といえば、1994年に松田明彦がベストディガー賞を受賞したことくらいだった。
しかし、この4年間で日本は大きく変わった。2023年には3位となり、世界王者イタリアとの3位決定戦を3-2で制した。続く2024年には決勝まで進出し、フランスに1-3で敗れたが準優勝。2005年こそ失意に終わったが、いまの日本はその悔しさをバネに、ふたたび偉業に挑もうとしている。
2026年VNLは、世界バレー界において今や誰も否定できないある事実を、あらためて知らしめた。日本はもはや「サプライズチーム」ではない。「何でも拾う守備だけのチーム」でもない。日本は、完成形に極めて近いチームへと進化を遂げている。世界の強豪相手にも自分たちのバレーができる、勝利を続けられるチームだ。
伝統的に、対戦相手は日本のコートにボールを落とすことは非常に難しい。山本智大と小川智大という2人のリベロがその中心だ。そして今は、そこからの切り返しが以前にも増して効果的になっている。
その理由の一つが、西田有志の完全復活だ。左利きのオポジットである西田がチームに復帰したことで、日本は強烈な決定力と試合の流れを変えるメンタルを取り戻した。さらに後ろには宮浦健人という頼れる選手も控えている。
セッターの関田誠大と深津英臣の存在は、西田だけに頼る必要を失くしている。また、相手ブロックに読まれやすい単調な攻撃を避けられるのは、石川祐希という絶対的なエースがいるからだ。
石川はペルージャで素晴らしいシーズンを送り、2025-26シーズンには世界クラブ選手権、欧州チャンピオンズリーグ、そしてイタリアリーグ優勝という三冠を達成した。
石川以前にイタリアリーグ優勝を経験した日本人は、2003年にトレビーゾで優勝した加藤陽一ただひとり。ただ、加藤はチームの中心とは言えなかったが、石川は紛れもない主役だった。
今シーズンからはトルコの名門ジラート・バンカルト・アンカラへ新たな挑戦に向かう。長年イタリアでプレーした経験は、彼をさらに大きく成長させた。だから石川の活躍は、もはや驚きではない。
むしろ、このVNL序盤2週で最も目を見張る活躍を見せているのは高橋藍だ。サントリーサンバーズ大阪を離れ、新シーズンからポーランドのルブリンでプレーする高橋は、1試合平均16.75得点で大会全体3位。彼の上にはベルギーのフェレ・レガース(22.38点)とブルガリアのアレクサンダル・ニコロフ(21.75点)という世界屈指のスターしかいない。
しかもベルギーとブルガリアは、その2人への依存度が非常に高いが、日本には、高橋以外の多くの攻撃オプションが存在する。さらに高橋は大会2位(1試合平均1.62本)のサービスエース13本を記録。上回るのはウクライナのドミトロ・ヤンチュク(16本)だけだ。また1試合平均7.5本のディグを記録し、守備でも高い貢献を見せている。
西田、石川、高橋。この3人はまさに日本代表の大きな大黒柱である。
日本の強さはそれだけではない。ロラン・ティリ監督は、大塚達宣という大きな成長を見せている戦力も有している。大塚はミラノでより磨かれ、その活躍が評価されて契約延長も勝ち取った。
迎える第3週、日本は初戦で7月15日にイタリアと戦い、16日にカナダ、17日にベルギー、19日にアルゼンチンと対戦する。戦いの舞台は自国の大阪だ。日本の物語はいよいよ佳境に入っていく。
文●マリオ・サルビーニ(ガゼッタ・デロ・スポルト紙記者)
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
マリオ・サルビーニ(Mario SALVINI)/イタリア大手スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』記者。バレーボールやビーチバレー、野球、ソフトボール、F1、フォーミュラE、MotoGPなどを担当。2025年のバレーボール世界選手権を現地で取材した。
【画像】大阪ラウンドを見据えた石川祐希と高橋藍の投稿!
2026年バレーボールネーションズリーグは、2週を終えた時点で日本が無敗を維持している。これほど素晴らしいスタートは日本男子バレーの歴史でも前例がない。
VNLのような大会では、スコアの数字だけが重要なわけではない。「どこに勝ったか」がより大きな意味を持つ。だが日本はその点においても、非常に価値のある成績を収めている。
中国で行なわれた第1週では、今大会最大のサプライズチームのひとつであるウクライナを3-0で圧倒し、その後は世界の超強豪ポーランドも3-2で撃破。中国とスロベニアにも勝利すると、続くフランスでの第2週では、セルビア、イラン、アメリカを下し、さらに開催国フランスとの激闘を3-2で制した。
昨年フィリピンで開催された世界選手権(トルコとカナダにストレート負け、3戦目でリビアに勝利も1勝2敗で予選リーグ敗退)で大きな失望を味わったチームとは思えないほど、日本代表は安定し、充実した戦いを続けている。
VNLでの快進撃がいかに特別なものなのかは、大会の歴史を振り返れば、日本がどこからここにたどり着いたのかを振り返ればよくわかる。
かつての日本は長年にわたり、世界の強豪との間には大きな格差があった。10位以下で大会を終えることも決して珍しくはなかった。大会名がまだ"ワールドリーグ"だった時代、日本の成績は最高でも6位止まりだった。記憶に残る出来事といえば、1994年に松田明彦がベストディガー賞を受賞したことくらいだった。
しかし、この4年間で日本は大きく変わった。2023年には3位となり、世界王者イタリアとの3位決定戦を3-2で制した。続く2024年には決勝まで進出し、フランスに1-3で敗れたが準優勝。2005年こそ失意に終わったが、いまの日本はその悔しさをバネに、ふたたび偉業に挑もうとしている。
2026年VNLは、世界バレー界において今や誰も否定できないある事実を、あらためて知らしめた。日本はもはや「サプライズチーム」ではない。「何でも拾う守備だけのチーム」でもない。日本は、完成形に極めて近いチームへと進化を遂げている。世界の強豪相手にも自分たちのバレーができる、勝利を続けられるチームだ。
伝統的に、対戦相手は日本のコートにボールを落とすことは非常に難しい。山本智大と小川智大という2人のリベロがその中心だ。そして今は、そこからの切り返しが以前にも増して効果的になっている。
その理由の一つが、西田有志の完全復活だ。左利きのオポジットである西田がチームに復帰したことで、日本は強烈な決定力と試合の流れを変えるメンタルを取り戻した。さらに後ろには宮浦健人という頼れる選手も控えている。
セッターの関田誠大と深津英臣の存在は、西田だけに頼る必要を失くしている。また、相手ブロックに読まれやすい単調な攻撃を避けられるのは、石川祐希という絶対的なエースがいるからだ。
石川はペルージャで素晴らしいシーズンを送り、2025-26シーズンには世界クラブ選手権、欧州チャンピオンズリーグ、そしてイタリアリーグ優勝という三冠を達成した。
石川以前にイタリアリーグ優勝を経験した日本人は、2003年にトレビーゾで優勝した加藤陽一ただひとり。ただ、加藤はチームの中心とは言えなかったが、石川は紛れもない主役だった。
今シーズンからはトルコの名門ジラート・バンカルト・アンカラへ新たな挑戦に向かう。長年イタリアでプレーした経験は、彼をさらに大きく成長させた。だから石川の活躍は、もはや驚きではない。
むしろ、このVNL序盤2週で最も目を見張る活躍を見せているのは高橋藍だ。サントリーサンバーズ大阪を離れ、新シーズンからポーランドのルブリンでプレーする高橋は、1試合平均16.75得点で大会全体3位。彼の上にはベルギーのフェレ・レガース(22.38点)とブルガリアのアレクサンダル・ニコロフ(21.75点)という世界屈指のスターしかいない。
しかもベルギーとブルガリアは、その2人への依存度が非常に高いが、日本には、高橋以外の多くの攻撃オプションが存在する。さらに高橋は大会2位(1試合平均1.62本)のサービスエース13本を記録。上回るのはウクライナのドミトロ・ヤンチュク(16本)だけだ。また1試合平均7.5本のディグを記録し、守備でも高い貢献を見せている。
西田、石川、高橋。この3人はまさに日本代表の大きな大黒柱である。
日本の強さはそれだけではない。ロラン・ティリ監督は、大塚達宣という大きな成長を見せている戦力も有している。大塚はミラノでより磨かれ、その活躍が評価されて契約延長も勝ち取った。
迎える第3週、日本は初戦で7月15日にイタリアと戦い、16日にカナダ、17日にベルギー、19日にアルゼンチンと対戦する。戦いの舞台は自国の大阪だ。日本の物語はいよいよ佳境に入っていく。
文●マリオ・サルビーニ(ガゼッタ・デロ・スポルト紙記者)
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
マリオ・サルビーニ(Mario SALVINI)/イタリア大手スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』記者。バレーボールやビーチバレー、野球、ソフトボール、F1、フォーミュラE、MotoGPなどを担当。2025年のバレーボール世界選手権を現地で取材した。
【画像】大阪ラウンドを見据えた石川祐希と高橋藍の投稿!