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格闘技・プロレス

「俺は入江茂弘やぞ!」蘇ったプライド――渡瀬瑞基との死闘が示した、プロレスへの“愛”と“誠実”

橋本宗洋

2026.08.27

リング上で死闘を繰り広げた入江(左)と渡瀬(右)。魂のこもった一戦となった。写真:橋本宗洋

リング上で死闘を繰り広げた入江(左)と渡瀬(右)。魂のこもった一戦となった。写真:橋本宗洋

 現代的な、いわゆる“ベストバウト”ではない。しかし確実に心に刻まれる闘いだった。

 8月15日に開催されたガンバレ☆プロレス後楽園ホール大会。団体のシングル王者である渡瀬瑞基は、挑戦者にフリーの入江茂弘を指名した。渡瀬にとって入江はDDT時代からの先輩でありタッグパートナー。DDTを退団する時も力を認め、背中を押してくれた。いわば恩人だ。入江はかつてDDTの頂点のベルトを巻き、防衛記録も作っている。

 だが挑戦者指名を受けた入江は、渡瀬に「今の僕はお前が思ってるほど強くない」と言った。それが偽らざる心境だった。フリーとしてさまざまな団体、また世界各国で活躍してきた入江。しかし最近はケガもあり大きな結果が出せていない。どうということのない試合で負けるようなこともあった。

 
 そんな現状を踏まえた上で、入江は「もう一回だけプロレスで輝きたい。愛をもって挑戦させてください」と渡瀬に伝えた。「プロレスに誠実に挑みたい。自分にはプロレスしかないから」とも。レギュラー参戦しているGLEATでの先輩後輩対決、エル・リンダマンvsT-Hawkにも刺激を受けたという。2人の闘いから“愛”を感じたと。

 観客をある程度、喜ばせる試合ならいつでもどこでもできる。入江にはそれだけのスキルと経験がある。しかしタイトルマッチで、しかも渡瀬との試合を“いつもの感じ”で済ませるわけにはいかない。プロレスに真摯に、誠実に向き合うしかない。

 愛とか誠実とか、言うのは簡単だ。プロレスラーはそれを試合で表現しなければならない。渡瀬と入江は真っ向から痛めつけ合うという手段を選んだ。攻防の大半が打撃戦だ。凝った技は必要なかった。体をぶつけ合うことがお互いの気持ちに向き合い、プロレスに向き合う行為とイコールだった。

 勝ったのは渡瀬。昨年の葛西純戦をきっかけにデスマッチにも参入し、デスマッチ団体FREEDOMSのタッグ王者にもなった。ガンバレ☆プロレスのタイトルマッチでは常に普通では終わらない展開を見せている。充実期を迎え、そのいったんの集大成とも言えるのが入江戦だった。

 数え切れないほどエルボーを叩き込む。終盤、優劣が決した中でも入江がレフェリーストップを拒む。「俺は入江茂弘やぞ!」と。失いかけていたプライドが、渡瀬との試合で蘇った。最後は抱き合って言葉をかわし、渡瀬が泣きながら渾身のエルボーで3カウントを奪った。
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