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フィギュア、来シーズンのルール変更ーー大技ジャンプ3種類の基礎点同点となる採点改定が及ぼす影響

辛仁夏

2020.05.27

4回転ジャンプでは、羽生(左)はループ、宇野はフリップ(中)チェンはルッツ(左)を得意とする。(C)Getty Images/茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 国際スケート連盟はフィギュアスケートの2020年-2021年シーズンのルールについて、ジャンプの基礎点改定などを行なった。

 主な変更点は、4回転ジャンプのループとルッツのジャンプが0.5点の増減となり、ループ、フリップ、ルッツの3種類のジャンプがすべて11.00点になる。また、3回転では、ルッツが0.6点減少して5.30点になり、フリップと同じ得点になるが、ループは4.90 点のままで変わらなかった。

 今回の基礎点の変更により、4回転が主流となった男子のトップ争いで、どの選手が優位に立ち、どの選手が不利になるか。4回転ループが得意な羽生結弦か、それとも4回転ルッツが得意なネイサン・チェンか、はたまた4回転フリップが得意な宇野昌磨か。おそらく、それほど大きく勢力図が変わることはないだろう。

 昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルで直接対決した羽生とチェンは、フリーで自己ベストに近いジャンプ構成を組み込んだ戦いを見せた。羽生はルッツ、ループ、サルコー、トーループの4種類5回の4回転を跳び、チェンはルッツ、フリップ、サルコー、トーループの4種類5回の4回転で対抗した。この試合で予定していたジャンプ構成の基礎点をみると、83.58点の羽生に対し、チェンは82.23点とその差は1.35点だった。実際の試合結果でみると、基礎点が1.1倍となる後半の連続ジャンプ3本のうち2本でミスを出した羽生がジャンプの基礎点で66.35点しか出せなかった一方で、チェンは3連続ジャンプの最後の3回転フリップを3回転サルコーにして安全策を取った以外は予定通りの構成で、すべて成功させて81.23点をマークする。ジャンプの基礎点だけで羽生に14.88点の大差をつけて圧倒し大会3連覇を飾った。
 
 そのファイナル当時のジャンプ構成を来季改定される基礎点で計算すると、羽生が0.6点減の82.98点、チェンは1.16点減の81.07点でその差は1.91点と開いた。しかし、チェンは昨季ほとんど跳んでいないループを含めて5種類の4回転を成功させており、かつジャンプ構成もまだ難易度を上げる余力を持っているので、4回転ルッツの得点が減少しても得点源となるジャンプの完成度でトップレベルの勝負ができるはずだ。

 一方の羽生も、昨季は安定さに欠けたが、ループとルッツの4回転を試合で成功させるなど、自分史上最高難度のジャンプ構成を組んで戦った自信をつかみ、来季に向けては4回転アクセルへの意欲が揺るぎないだけに、さらなるレベルアップを目指してくるに違いない。

 宇野に関しては、昨季挑戦しようとしたフリップ(2本)、サルコー、トーループにループを加えた4種類の4回転で自己最高のジャンプ構成を作ってくるのかに注目だ。

 今回の基礎点変更で3種類の4回転を同点にした背景には、得点をより稼ぐために高得点のジャンプを先にマスターした選手たちが増えて難しさが容易化してきた4回転ルッツに対し、それほど得点源とならず、3回転と比べて習得が難しく、ほとんど跳ぶ選手がいなかった4回転ループの価値を上げてジャンプの習得を促そうという狙いがあるのではないだろうか。

 4回転が主流になりつつある男子の来季が、どんな戦いになるのか、興味深いところだ。
 

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