世界中が注目した最終裁決は、大方の予想通り“ギルティ”だった。

　現地６月22日、スイスのスポーツ仲裁裁判所（CAS）は中国競泳界のスーパースター、孫楊に再審理後の判決を言い渡した。一連のドーピング検査を拒否・妨害した容疑に対して有罪と認定し、「４年３か月の資格停止処分」の厳罰に処すと発表したのだ（適用は2020年２月28日から）。昨年２月に下された「８年」からは大幅な減刑となったものの、目前に迫った東京五輪への出場の道は断たれ、来年の地元・杭州でのアジア大会や日本開催の世界水泳にもエントリーできなくなった。
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　これを受けて、孫楊は中国を代表するジャーナリストの取材に応じ、短いながらも今後に向けた決意を明かしている。

「実際のところ、いまの俺はすごく落ち着いているし、自信も揺らいではいない。自分を奮い立たせて頑張ろうという気持ちでいっぱいだ。パリを目ざすぞ、って想いでね」

　現在29歳の孫楊。さすがに現役引退となると早すぎるが、ペナルティ明けには32歳となっており、そこまで競技レベルを持続できているかには疑問が残る。それでも中国スポーツ紙『新浪体育』によれば、孫楊の決意表明を受けて、中国のコミュニティサイトには彼を支持する声が殺到。あいかわらずの人気ぶりを示しているようだ。
  　そんななか、台湾の有力紙『自由時報』が興味深い記事を掲載した。「孫楊は中国代表チームには戻れない。よってパリ五輪に出場するのも難しいだろう」と報じたのだ。

　同紙が調べたところ、最新の「中国アンチ・ドーピング規約」に記載されているひとつの条項が引っかかるという。そこには「ドーピング違反で１年以上の資格停止処分を受けた選手は（中国）代表チームには入れない」と記されているのだ。同紙は「たしかに孫楊は禁止薬物の使用で厳罰を食らったわけではない。だが、検査拒否のほうがよほど致命的と考えるべきだ」と断じている。

　もしもこの国内ルールが事実で適用されるなら、孫楊の前途は文字通りの真っ暗闇だが──。五輪で３つの金メダルに輝く国民的英雄に対して、中国当局が超法規的処置を取る可能性は低くないだろう。