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ホンダのレジェンド、ドゥーハンがマルケス復活に太鼓判!「再びタイトルを争うための資質を全て備えている」

甘利隆

2021.10.21

復帰後2勝を挙げたマルケスだが、まだ本調子ではないようだ。(C)Getty Images

 2020年7月に右上腕骨を折る重傷を負ったマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)。先日のMotoGP・第15戦アメリカズGPで怪我から復帰後2勝目を挙げ、徐々に調子を取り戻しつつあるが、マルクが優勝したのはいずれも痛めた右腕にあまり負担がかからず、以前から得意としていたMotoGPでは珍しい反時計回りのサーキットのみで、それ以外のコースでは凡ミスを犯すこともしばしばあり、「全盛期の走りをもう取り戻せないのでは?」と懐疑的に見る関係者もいる。

 しかし、かつての2輪ロードレース最高峰、WGP500ccで5年連続チャンピオンに輝いたホンダのレジェンド、ミック・ドゥーハンは「マルクは再びタイトルを争うための資質を全て備えている」と考えているようだ。

「まだ右腕にしっかり力を入れられないのが主な問題だろう。マルクは自分が乗りたい方法を完全に把握しているが、今は過去のようにそれをすることができない。ホンダも少し道に迷っていたように思う。RC213Vは以前と違ったバイクになってしまい、それも彼のバランスを狂わせた」と現状を分析。その上で「長い期間、マルクは欠場していて、その間、他のライダーたちは毎週のようにレースをして競い合い、成長し、レベルが上がっていた。このスポーツでは誰も待っていてはくれないんだ」と擁護する。

「だが、彼は信じられないほどの才能を持っている。ホンダが再び競争力のあるバイクを作ることができれば、きっとまたタイトル争いに加わることになると確信している。少し落ち着いて取り組む必要があるかもしれないが、少なくとも再び世界タイトルを目指して戦うために必要な全ての資質を間違いなく備えていると思う」

 このように母国オーストラリアのポッドキャスト『In the Fast Lane』でエールを贈ったドゥーハンは、復活後、初めて勝った第8戦ドイツGPの直前にもマルクと電話し、同じレプソルカラーを身に纏う後輩にアドバイスをしている。
 
 1992年に自身も一時は切断が検討されるほどの重傷を右足に負い、似たような境遇を経験した先輩から話を聞いた小柄な元世界王者は「バイクに思い通り乗れないこと、愚かなミスやクラッシュをしてしまうこと、走るたびに速かったり遅かったりで、その理由がよく分からないことなど、僕が悩んでいる問題は、全て彼が過去に抱えていたものと一緒だったんだ」と安堵したという。

 ホンダはミシュランが導入した新しいリアタイヤの扱いに苦労しており、それに由来するグリップ不足が陣営全体の不振につながっているが、シーズン半ばの第9戦オランダGPから新しいフレームを投入。新旧さまざまなコンポーネントを組み合わせ、少しずつ改善されてきている。

 次戦エミリア・ロマーニャ&リビエラ・ディ・リミニGPが開催されるミサノ・サーキットでは9月にサンマリノGPが、続くアルガルヴェGPが行われるアルガルヴェ・サーキットでは4月にポルトガルGPが開催され、それぞれ4位、7位という結果を残している。

 特に第3戦ポルトガルGPは復帰レースだったこともあり、そこでのリザルトは、現在の回復プロセスを測る格好の判断材料となることだろう。

「ミサノでのレースが難しいことは分かっていますが、最後の2レースで自分がどのレベルにあるかを確認したい。ホンダは懸命に働いてくれているし、来シーズンは自信がある」と語るマルク。ホンダを引っ張る絶対エースの2022年を見据えた逆襲が、いよいよ始まるのかもしれない。

文●甘利隆
著者プロフィール/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super