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「出場は免罪符ではない」ワリエワへの裁定に英メディアが改めて疑問符「選手たちは無力感を抱いている」【北京五輪】

THE DIGEST編集部

2022.02.16

ワリエワ出場に対して、同じ競技をする選手が何も感じないはずはなく…。(C)Getty Images

 2月15日、北京五輪のフィギュアスケート競技、女子シングルのショートプログラム(SP)が行なわれた。昨年12月のロシア選手権で採取された検体から違法薬物が検出され、ドーピング違反が問題となっているカミラ・ワリエワは、スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定を以って競技への参加が許可されている。

 15歳のスケーターは、SPでトリプルアクセルの着氷が乱れるなどのミスもあったが、82・16点を獲得。首位でフリースケーティング(FS)に進むことになった。しかし、FSでワリエワが好成績を収めたとしても、国際オリンピック委員会(IOC)および国際スケート連盟(ISU)は、競技後のセレモニーおよびメダル授与式は行なわないことを発表している。

 異例尽くしのこの状況に、英紙『The Guardian』のショーン・イングル記者は「この6日間の並外れた騒動と苦悩のなかで、彼女は訓練されたことを実行した」と綴っている。

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「完璧な演技ではなかった。冒頭のトリプルアクセルでふらつき、転倒寸前に陥った。だが、薬物検査で陽性反応が出たことで世界中が彼女に注目するなか、集中力を取り戻し、残りのエレメンツをこなしてトップのスコアを得た。15歳のロシア人が北京にいるべきかどうか疑問視されるなか、それを成し遂げたことは確かに印象的だった」
 
 しかし、同じ舞台にあがることになった選手たちはどう感じたのだろうか。イングル記者はイギリス代表であるナターシャ・マッケイが「ここは平等な競争の場であることを願っているけれど、私たちは下された決断について何もできない」と率直に語ったと伝えている。

 そして27歳のマッケイが海外メディアの記者から「ワリエワに同情するか?」という質問を投げかけられたのに対し、「表彰台でメダルを受け取れない人たちに同情する。オリンピックで最も重要な部分なのに、その機会が与えられないのだから……」と答えたという。

 さらに、26歳のスウェーデン代表ジョセフィン・タイガードは「フェアプレーは大切だと思う」とコメントし、次のように続けた。

「このケースは少し何か悲しさを覚える。私は良いロールモデルになろうと思っていて、フィギュアスケートはとても素敵なスポーツだということをみんなに知ってもらいたい。けれど、こういったネガティブなことは、その機会を奪ってしまう。この大会でなくても、フィギュアの素晴らしさを思い出してもらえるようにできたらいいけれど……」

 この問題が選手間にも波紋が広げているのは当然だ。加えて、ワリエワの弁護団が薬物検査の陽性の原因は、祖父の心臓病の薬によるものであると示唆したことに対して、イングル記者は「北京では眉唾のようだ」と批判している。

「CASがワリエワ選手の出場を認めたことで、彼女やロシアがダイアモンドの装飾が施された免罪符を手に入れたかのような報道がされたが、そうではない。CASの決定は"執行猶予"であり、恩赦ではない。木曜日にワリエワ選手が金メダルを獲得したとしても、ドーピングによる禁止令によって失う可能性はゼロではないのだ」

 ROCへの不信感はぬぐい切れないまま、女子シングルは17日にフリーを迎える。

構成●THE DIGEST編集部

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