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ラグビー

感染症との闘いでもあったリーグワン初年度。稲垣啓太と現役オールブラックスの言葉から読み解く、日本ラグビーの「進化の可能性」

吉田治良

2022.05.30

リーグワン初代王者に輝いた埼玉。中央で稲垣がトロフィーを掲げる。(C) Getty Images

リーグワン初代王者に輝いた埼玉。中央で稲垣がトロフィーを掲げる。(C) Getty Images

 ラグビー・リーグワン1部のプレーオフ決勝が国立競技場で行なわれ、レギュラーシーズン2位の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉)が、同1位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)を18-12で下し、記念すべきリーグ初代王者に輝いた。

 昨季、前身のトップリーグ最終年の決勝と同じカードを制した埼玉は、これで事実上の“2連覇”達成となった。

【動画】リーグワン・プレーオフ決勝、勝負を決めるライリーの豪快なワンハンドトライ!
 立ち上がりの6分にPGで3点を先制された埼玉だったが、その後、SO(スタンドオフ)山沢拓也のPGで追いつくと、28分には密集から左へ展開し、マリカ・コロインベテのトライで逆転。自慢の堅守を武器にペースを握り続け、後半に東京SGのFB(フルバック)ダミアン・マッケンジーの3本のPGで一時13-12と1点差に迫られる苦しい時間帯はあったものの、73分には敵陣でのラインアウトからフェイズを重ね、最後は初代リーグワントライ王に輝いたCTB(センター)ディアン・ライリーの豪快なワンハンドトライで突き放した。

「反則をなるべく少なく、かつ80分間相手にプレッシャーをかけ続けることがテーマだった」というPR(プロップ)稲垣啓太の言葉通り、規律ある試合運びで攻撃力に定評のある東京SGを22mラインの内側に入らせず、ノートライに抑えた埼玉。とりわけラインアウトやスクラムといったセットピースでの優位性が目を引いた。

 トップリーグを再編し、地域密着と日本ラグビーの質の向上を掲げて今季からスタートを切ったリーグワンだが、国立競技場で予定されていた開幕カードが新型コロナウイルスの影響で中止になるなど、まさに前途多難の船出に。以降もコロナ禍で多くの試合が中止に追い込まれ、またチーム名の分かりにくさ(「東京」を冠するチームが5つもある)なども重なって、想定していた熱狂を呼び込めたとは言い難かった。

 その開幕戦も含め、最初の2試合が不戦敗となった埼玉。そこからプレーオフの2試合も含めて怒涛の16連勝で頂点にたどり着いたが、稲垣もシーズンを通して難しさを感じていたという。

「感染症対策はしっかりしていたんですが、気付いたらまさか自分たちが、という状況でした。それで、今まで通りの対策、今まで通りのラグビーをしているだけでは、このシーズンは戦い抜けないなと。ラグビー(という競技面)以外の面で気を取られることも多かったですね」

 また、現役のオールブラックスとして、多彩なキックとランで違いを見せつけた東京SGのユーテリティバックス、ダミアン・マッケンジーもこう話す。

「キャンセルになってしまった試合の後で、いかにモチベーションを上げるかが重要だった」

 それでも、ある意味、感染症との闘いでもあった1年目のシーズンを、リーグワンは乗り越えた。東京SGのCTB(センター)でキャプテンの中村亮土は、「難しい状況にも臨機応変に対応してくれた」とリーグワンの運営に対して感謝の言葉を述べたが、いきなり訪れた試練を、選手、チーム、運営サイドが一丸となって乗り越えた経験は、来季以降に間違いなく生かされるはずだ。
 
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