ロシア・フィギュアスケート界で“皇帝”と謳われるエフゲニー・プルシェンコ氏の周辺が騒がしい。怒りに任せてぶちまけた問題発言が、いまだ波紋を広げているのだ。

　事の発端は、現地２月14日に行なわれたフィギュアスケートのロシア・ジュニア選手権だった。自身が率いる「エンジェルズ・オブ・プルシェンコ」の門下生たちも出場。その大会の女子シングルで、優勝が期待されたヴェロニカ・ジリナ（14歳）が２位に終わり、ソフィア・チトワ（14歳）が４位で表彰台を逃すと、採点したジャッジへの不満を爆発させたのである。

　冬季五輪で２つの金メダルを獲得した40歳は「もうウンザリだ！　彼女たちは高難度のジャンプを成功させているのになぜこんなに得点が低いのか！」とＴＶインタビューで声を荒げ、「審判ともFFKKR（ロシア・フィギュアスケート連盟）の責任者とも話したよ。『どうしていつも私を目の敵にするんだ？』とね。いったい正義はどこにあるんだ？」と訴えた。

　さらに、ロシア・スポーツ界で深刻な問題となっている「選手の国籍変更」にも言及。「こんな不当な仕打ちが続くならば、彼女たちや親たちは他の国へ移って競技を続けようとするだろう。“溺れ死に”するくらいならね」と吐き捨て、「決めるのは彼らであって、私はその決断をバックアップするだけだ。より必要とされる環境があるならば、そこへ行くのは彼らの自由だから」と続けた。

　これにはロシア通信社『RIA Novosti』が、「プルシェンコがFFKKRに対して脅迫とも取れる発言をして宣戦布告した」と報じるなど、国内からも批判の声が噴出した。名コーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏の陣営で振付師を担うアレクセイ・ゼレズニャコフ氏は、「現在の国を取り巻く状況を考えても、なんと見苦しい発言だろうか。採点が納得いかないものだから、教え子の国籍変更を容認する？　国家に対する明らかな裏切り行為だよ」と非難している。
  　そんななか、件のロシア・ジュニア選手権・女子シングルで優勝したアリーナ・ゴルバチェワ（15歳）のコーチ、ソフィア・フェドチェンコ氏が『Sport24』の取材に応え、言わば“ライバル”であるプルシェンコ氏の発言に対する私見を述べた。

「私に言わせれば、あれは一種のヒステリーね。彼は自身の指導におけるミスを認められない人なのよ。採点にバイアスなどいっさいなかったし、私たちの優勝が妥当だと思う。今回は絶対的な本命のアリサ・ドボエグラソワ（15歳）が欠場していたから、プルシェンコは自分の生徒が優勝すると信じ切っていたのね。そう甘くはないということよ」

　そして国籍変更の是非に関しては、「とても難しい問題だとは思うけど、あんな言い方をしたらもはや恐喝だわ」と断じたうえで、「実はアリーナのところにも外国から３つのオファーがあるの」と告白。「次のオリンピックに向けてパスポートを用意してくれて、かなり金銭面でもいい話。今は、何が起こるかなんて分からない。政治は政治。でも個人的に優秀なアスリートには、もっと国際舞台で演技をさせてあげたいという思いがある」と話すにとどめた。

構成●THE DIGEST編集部

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