フィギュアスケートのグランプリ（GP）ファイナルが12月５日（現地６日）、イタリアのトリノで開幕した。同日には男子ショートプログラムが行なわれ、３年ぶり５度目の優勝を狙う羽生結弦（ANA）は、97・43点で２位発進となった。首位に立ったのはネイサン・チェン（アメリカ）。自己ベストとなる110・38点を叩き出す圧巻の演技を見せた。

　最終滑走となる６番目で登場した羽生は、冒頭の４回転サルコー、トリプルアクセルを成功させたが、４回転－３回転のコンビネーションが単発に終わる痛恨のミスを犯してしまう。それでも、気を立て直して以降の演技をしっかりまとめ、７日のフリーへとつなげた。

　羽生にとってGPファイナルは３年ぶりの出場だ。過去２大会は怪我で辞退を余儀なくされていただけに、今大会にかける想いは強い。

　プレスカンファレンスでは、「僕は強い相手と戦うのが好きで、今日の演技前には彼（ネイサン・チェン）の点数だけ見て入りました」と切り出し、「結果としては、自分もいい演技をして彼と最高の戦いをしたかったけど、これもひとつの経験で、またひとつフリーに向けて楽しむ材料が増えたと思っています。こうやっていつもスケートをやっている意味とか、そういうものを与えてくれている存在だなと思います」と好敵手を称え、自身のパフォーマンスについての反省と切り替えを口にした。

　もちろん、悔しさがないわけではない。
  「正直な気持ちを言うと、このプログラムでジョニー・ウィアーさんはトリノ・オリンピックですごく良い演技をして２位だったので、僕も良い演技をしたかったなと言うのが本音です」

　憧れのウィアー氏が06年のトリノ五輪で好演した「秋によせて」を採用していただけに、なおさら想いは強かっただろう。

　とはいえ、「ただ、悔しいと言ってもしょうがないですし、やっぱりすごく彼（チェン）の演技が良かったので、それはすごく嬉しい。この点差は大変だなと思いますが、フリーに向けていろいろ考えて、僕にできることが何なのか、何をすべきなのかを考えながら一日一日過ごせたらいいなと思います」と前を向いている。

　フリーが行われる７日は、奇しくも羽生の誕生日。本人も言う通り、「この点差は大変」なのは事実だが、悔いの残らない演技で世界中のファンを魅了したいところだ。

構成●THE DIGEST編集部