大番狂わせを演じた青年が、会場を熱狂の渦に巻き込んだ。

　7月30日、さいたまスーパーアリーナで開催された『超RIZIN.2』のRIZINパート第5試合（5分3ラウンド）パトリシオ・ピットブル（ブラジル）vs鈴木千裕が行なわれ、1ラウンド2分32秒で、鈴木が劇的なKO勝ちを収めた。

　ベラトールのフェザー級王者相手に、24歳の若武者が大金星を挙げた。鈴木が強烈なラッシュでピットブルにプレッシャーを与えると、2分過ぎに鈴木の右ストレートが顔面を捉えた。さらに、相手のタックルをかわしコーナーに追い詰めると、豪快に振り抜いた鈴木の右がヒット。王者が前のめりに倒れる形で、決着がついた。

　勝利の瞬間、鈴木は感情が爆発。マイクを手に持つと、「超RIZINに稲妻落としてやったぜ！」と興奮を隠せず、「前回（RIZIN.43でのクレベル・コイケ戦）めちゃくちゃ悔しかったので、やり返しました！みんなが応援してくれたからできた。ありがとう！」と絶叫。下馬評を覆す結果に、会場は大いに沸いた。

　予想外の結末に衝撃を受けたのは、日本人だけではない。MMAの本場である米国でも鈴木の勝利に喝采が送られている。米格闘サイト『MMA Fighting』は公式サイト上において、「チヒロ・スズキがパトリシオ・ピットブルを衝撃のKOで葬った」と銘打った見出しで試合結果を配信。「スズキはベラトール王者を下し、RIZINプロモーション史上最大の番狂わせを演じた」と伝え、24歳の日本人ファイターの勝利を称えている。
  　当然、SNS上でも鈴木のKO勝ちは話題となった。一時トレンドに「鈴木千裕」が急浮上。激闘から一夜明けても、「いやー凄かった！熱い試合でマジ大興奮！」「エグい右ストレートやったな～」「絶対負けると思ってた！千裕すまん!!!!謝るわ」「最高！豪快で気持ちいいいい！」など賛辞が鳴り止まない。

　鈴木は試合後の会見でも興奮を抑えられず、「テーマが負ける勇気を持って勝ちにいく。それで勝ったという感じです」と言い、勝った瞬間は「あの歓声を聞いたときは忘れられない。これが超RIZINだな」と振り返った。

　格闘技を「心底愛している」と語った若武者は「不可能はないと証明できた。明日から自分を信じれば世界は変わると思う」と充実した表情で語る。もし相手から再戦を要求されたらという問いには「ひと言で、イエス！」と満面の笑顔で答えた。

　リスクを恐れない強い気持ちが今大会最大のサプライズを起こし、大きな雷鳴を轟かせた。

取材・文●湯川泰佑輝（THE DIGEST編集部）

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