ラグビー

大一番のアルゼンチン戦、カギを握る「サムライタイム」!残り20分で求められる我慢強さとタスクの遂行力【ラグビーW杯】

向風見也

2023.10.08

アルゼンチンとのベスト8入りを懸けた大一番を迎える日本代表。(C) Getty Images

 姫野和樹がいま、吹っ切れている。

 過度な緊張が解けたのか、万人に見つめられる大一番では得意の突破、ジャッカルを連発する。

 何より普段から、澄んだ顔つきで日々を過ごしているようだ。内部の様子を知る人から、そう見られている。

【画像】ラグビーワールドカップ2023フランス大会に挑む日本代表メンバー

 この秋は、ラグビーワールドカップフランス大会で日本代表の主将を務めている。

 現地時間10月8日には、決勝トーナメントをかけてアルゼンチン代表に挑む。一時は世界一3度のニュージーランド代表をも撃破した強豪と、雌雄を決するのだ。
 
 激しいコンタクトをモットーとする強敵を見据え、こちらも激しさで鳴らす姫野は静かに宣言する。

「フィジカルな試合になる。ただ、ここまでフィジカルな試合をこなしている。(アルゼンチン代表が)チームとして何をしてくるかがわかっている分、対策もしやすいです。相手の情熱的なラグビーを受けず、ドミネートすれば、流れを掴んでいける」

 ここまで2勝1敗の日本代表はまず、接点勝負に出る。

 スタンドオフの松田力也らが好判断によるキックを放ち、蹴り合う流れで生じた局地戦では「ダブルコリジョン」と称する2人がかりでのタックルを連発。刺さった人はすぐに起き上がり、次の防御に備える…。

 日本代表は、かようにぶつかり合いで先手を取りたい。なにせ、6月中旬から格闘技風のセッションで鍛えてきた。「(その成果が)出ていなければ困る」とは、ある主力格だ。

 キーワードは「刀を抜く」。覚悟を決めて挑む。リーチはうなずく。

「相手のアタックに対して、(守りで)自分たちが前に仕掛けないと負けるのはわかっている。やられる前にやるしかない」

 ぶつかり合いは地上戦のみにあらず。向こうが多用しそうなハイボール(高い弾道のキック)の獲得合戦でも、日本代表は身体を張ってボールを確保したい。

 おもにハイボールの標的とされるウイングの位置へは、187センチのシオサイア・フィフィタを今季初先発させる。

 なにより個々のサイズだけには頼らず、組織で対抗するつもりだ。

 力を入れるのはエスコート。捕球役の周りに並び立ち、向こうのプレッシャーを首尾よく制御する動きだ。

 蹴られた位置へ複数名が戻り、後列で待ち構える味方の捕球役をガード。その流れでこぼれ球を得たい。

 身長178センチでウイングの松島幸太朗は、仲間の協力を信じる。

「(ハイボールの落下地点に)相手のプレッシャーが来た時に、どれだけ壁(エスコート)を作れるかが(成否に)影響する。キャッチする人がボールを捕ることに集中できる環境を、作りたいです」
 
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課題は「サムライタイム」。仲間と繋がり、タスクを遂行できるか