ゴルフ

<2019ベストヒット!>シンデレラストーリーを駆け上がった渋野日向子がゴルフ界に投じた一石

山西英希

2019.12.30

2019年の女子ゴルフツアーに旋風を巻き起こした渋野。(C)Getty Images

 2019年の名珍場面を『THE DIGEST』のヒット記事で振り返るこの企画。今年を象徴するアスリートのひとりとして、誰もが頭に思い浮かぶのが渋野日向子だろう。日本勢として42年ぶりに全英オープンを制し、国内賞金女王争いでは2位に。このルーキーの活躍は、まさに鮮烈だった。
記事初掲載:2019年12月3日

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 国内女子ツアー最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ最終日、渋野日向子は首位と2打差の好位置でスタートした。賞金ランキングトップにいた鈴木愛の結果次第では、優勝、もしくは単独2位で逆転賞金女王という状況だ。ゴルフファン以外にも注目を浴びたが、結果は2位タイでフィニッシュし、史上最年少での賞金女王誕生とはならず、鈴木愛に757万5351円及ばない賞金ランキング2位で今季の全日程を終了した。

 それでも、昨年のファイナルクオリファイングトーナメントでは40位と、今季の前半戦で何試合出場できるかわからなかった状況からツアー4勝を飾ったのは大健闘のひと言に尽きる。しかも、AIG全英女子オープンでは42年ぶりに海外メジャー制覇を果たし、一躍時の人となった。まさに、シンデレラストーリーを地でいった渋野だが、その予兆は前半戦からすでにあった。

 出場6戦目となったKTT杯バンテリンレディスオープン初日、渋野はプロ転向以来ワーストとなる81を叩き、106位タイの最下位に沈む。ところが2日目に66をマークし、50位タイで予選通過したのだ。「コーチからやれるだけやってこいと言われたので攻めようとは思っていましたが、今日のゴルフは自分にも意味がわかりません(笑)」と渋野自身も驚きを隠せなかった。
 
 ツアープロといえども1日ではなかなか修正し切れないものだが、開き直ったときの強さ、ここ一番での圧倒的な集中力の高さを周囲に知らしめたことは間違いない。その勢いに乗って、翌週のフジサンケイレディスクラシックで2位タイに食い込み、さらに2週後の国内メジャーであるワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップでツアー初優勝を飾る。この時点で渋野の強さは本物だと誰もが思い始めた。

 今季を振り返ると、何かの目標を持ったときの渋野は必ずと言っていいほど、好スコアをマークしてきた。AIG全英女子オープンの出場権を得るには、6月終了時での賞金ランキング5位以内に入っていなければいけなかった。残り2試合となった時点で渋野は圏外にいたが、7位タイ、4位と結果を残し、賞金ランキング3位に滑り込み、見事出場権を手にしたのだ。どちらも最終日に60台をマークして順位を上げての結果だった。仮に、この2試合で上位に入れなければAIG全英女子オープンの出場もなかったし、ここまでの渋野フィーバーもなかっただろう。