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「阿部詩はまた戻ってくるだろう。敗北は不名誉ではない」国際柔道連盟がケルディヨロワ戦をレポート「観衆は勝者を称え、敗者に励ましのエールを捧げた」【パリ五輪】

THE DIGEST編集部

2024.07.29

東京五輪の金メダリスト、阿部詩は連覇を狙ったが、2回戦でウズベキスタンのケルディヨロワに一本負けを喫した。写真:JMPA代表撮影

 現地7月28日、パリ五輪の柔道女子52キロ級が行なわれ、東京五輪の金メダリストで今大会の優勝候補と見られていた阿部詩が2回戦で敗れる波乱があった。

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 ウズベキスタンのディヨラ・ケルディヨロワと対戦した阿部は、2分14秒に内股で技ありを奪うなど、試合を優位に進めていた。しかし3分4秒、谷落としを受けて背中から畳に落ち、まさかの一本負け。前回女王が2回戦で敗れてしまった。

 対戦相手のケルディヨロワは、2023年と24年の世界選手権で2位となり(23年は阿部に敗戦)、現在は世界ランク1位に立っている。それでも棄権を除けば、19年11月から約5年間も無敗を続けている阿部のほうが圧倒的優位と見られていた。

 この一戦について、国際柔道連盟がホームページにレポートを掲載。「勝利と敗北、スポーツの2つの側面」というタイトルを付け、「なぜ私たちは五輪を含むすべての国際大会を愛するのだろうか。おそらく、何よりも感動を味わうためだろう。この試合で私たちが体験したのは、並外れたものであり、今後長く語り継がれるであろう瞬間だった」と記し出した。

「世界ランク1位のケルディヨロワと、今大会で新たな戴冠を約束されていたウタ・アベの一戦は、パリ大会の決勝カードになる可能性もあった。アベの世界ランクは9位で、トップ8に入っていなかった。圧倒的な強さと素晴らしい実績を残しているにもかかわらず、立場的には1回戦でどの選手と対戦してもおかしくはなかった」

「1回戦でケリー・デグチを倒したアベは、優勝への道のりを順調に歩んでいるかのように見えた。そしてケルディヨロワとの2回戦。アベは調子の良さと相手を支配するかのようなスタートを見せた。しかしウズベキスタンの柔道家は技ありを取られながらも、突然、電光石火の動きで日本チャンピオンを畳に叩きつけた。一本! アベのパリ五輪を終わらせ、連覇の夢を断ち切った」
 
 このように阿部とケルディヨロワの一戦を振り返った同連盟は、さらにスポーツ精神の話を続けた。

「すべてのスポーツは、スポーツ以外の何物でもない。26歳のケルディヨロワはこの先も戦いが続くからこそ、喜びを抑制していた。他方で敗れたアベは苦悩し、ひとりでは歩けなくなって、コーチに支えながら退場していった。このような瞬間を経験できるのはスポーツだけだ。スポットライトの裏側には、私たちが尊重しなければいけない"人間の物語"があることを忘れてはいけない。ケルディヨロワはとくに柔道においては、あらゆることが常に可能であることを証明した。この瞬間のために準備し、劣勢の状況でも諦めずに自分の柔道を信じた。彼女の戦いに拍手を送りたい」

「一方のアベは24歳ながら、すでにすべてを勝ち取っている。この敗戦を消化した後に、また戻ってくるだろう。敗戦もスポーツの一部であることを忘れてはいけない。すべてが事前に決まっているようなら、あらゆる感情は存在しないだろう。この試合で私たちは、勝利の喜びと敗北の苦悩を目の当たりにした。パリの観衆も、これを理解していた。ケルディヨロワの勝利を称えながら、アベに励ましのエールを捧げた。敗北は不名誉ではない。そしてルールと対戦相手への敬意がなければ、その勝利にも栄光はない」

 このように記事を進めた同連盟は、このような一文で記事を終わらせている。

「ケルディヨロワとアベはきょう、スポーツ史に感動的な1ページを提供した」

構成●THE DIGEST編集部

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