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「最高で金、最低でも金」は日本柔道の呪縛か...レジェンド穴井氏は「どこに行っても『金目指して頑張ります』と言わなければならない」【パリ五輪】

THE DIGEST編集部

2024.08.01

本来の持ち味を発揮できなかった新添。写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 パリ五輪柔道女子70キロ級の日本代表、新添左季は現地7月31日に敗者復活戦に臨んだが敗戦。試合後のインタビューではオリンピックの重圧に言及する場面があった。

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 昨年の世界選手権で優勝を収めた新添。過去5大会で4度の金メダルに輝いている日本の得意階級で初出場ながら大きな期待を背負って金メダルを目指した。

 初戦となった2回戦の相手は今年3月に敗れているグルノザ・マトニアゾワ(ウズベキスタン)。1分過ぎたあたりのところで出血するトラブルに見舞われたものの、2分過ぎたところで抑え込み一本。危なげなく初戦を勝利で飾った。

 しかし準々決勝ではサネ・ファンダイケ(オランダ)との対戦では、開始早々、組手を切ったとして不可解な指導、そして一瞬の隙から谷落としで技ありを受ける苦しい展開。2つ目の指導も受けたことで攻めるしかない新添だったが、ファンダイケが寝技で時間を稼ぎ勝負あり。敗者復活戦で銅メダルを目指すこととなった。

 敗者復活戦では、東海大柔道部のアイ・ツノダロウスタント(スペイン)と対戦。得意の両手で道着を持ってからの内股を警戒され、なかなか技が決まらない。本戦4分間では決まらず指導が新添2、ツノダロウスタント1で延長に入ると、新添に3つ目の指導が入り敗戦。初出場でメダル獲得はならなかった。

 試合後のインタビューで新添は「内定をいただいてから1年ちょっとあったんですけど、1年間本当に毎日苦しくて金メダル獲るために頑張ろうって思ってたんですけど、獲れなくてもう本当に情けない気持ちでいっぱいです」と率直な気持ちを語った。当日のパフォーマンスについては「出てる選手はいつもの国際大会と変わりない顔ぶれなんですけど、それでも勝てなかったのはやっぱり本番で自分の力を発揮する、優勝するって気持ちがみんなより負けてたのかなと思います」と実力を100%発揮できなかったと悔やんだ。

 これに解説の世界選手権金メダリストの穴井隆将氏は「情けないなんてことはないですよね。内定して1年間苦しかったと思うんですよね。本当に色んな人から『頑張って』と言われる毎日だったり、どこに行ってもどの取材でも『金メダル目指して頑張ります』と言わなければいけない自分だったり日々葛藤があったと思います」と新添の心境を慮った。そして、「それを乗り越えてこの舞台に来た。本当に頑張ったと思います。お疲れ様と言ってあげたいですね」と労いの言葉をかけた。

 今回の五輪競技のうち唯一日本発祥の種目である柔道。これまでも幾度となく金メダルを獲得してきたまさに日本の"お家芸"であり、かつて2000年のシドニー五輪前に谷亮子(旧姓・田村)が口にした「最高で金、最低でも金」というあまりにも有名な言葉にもある通り、日本中から金メダルを期待される種目だ。

 しかし新添は「毎日苦しかった」と話し、いつもの実力を発揮できなかったと振り返り、穴井氏はどこに行っても金メダルを期待されることが新添の葛藤につながったと指摘した。日本中の柔道界への期待は選手らに過剰に働いているのかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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