競馬

【名馬列伝】ウオッカ、ダイワスカーレットが築き上げた“牝馬の時代”を継承したブエナビスタ。顕彰馬クラスの実績を刻んだ名牝物語

三好達彦

2024.09.14

ブエナビスタは前年2着降着の雪辱を果たす激走でジャパンCを制した。写真:産経新聞社

 実績は顕彰馬クラスである。

 牝馬クラシック二冠を制し、古馬になってからは牡馬を相手に天皇賞(秋)とジャパンカップを優勝。GⅠレースの勝ち鞍は6つを数え、獲得賞金は国内外合わせて約14億9000万円にも達しており、2010年にはJRA賞年度代表馬にも輝いた名牝ブエナビスタ。こんな牝馬はなかなかいない。

 だが、同馬の引退から13年経っているが、いまだ顕彰馬には選出されていない。理由はいくつか考えられる。ひとつは、GⅠレースにおける2度の降着によって付いた悪いイメージが付きまとっていることではないだろうか。

 2010年のジャパンカップ。強引な進路確保によってローズキングダムに不利を与え、30分にもわたる審議の末、1位入線しながら、ローズキングダムと入れ替わりの2着に降着となった。またその前年の秋華賞(GⅠ)でも、直線での外斜行によって他馬に不利を与え、自身は2位入線しながら3位入線のブロードストリートと入れ替わりで、3着に降着となっている。

 この2つによるダーティなイメージが顕彰馬という格式を重んじる選考で不利に働いている疑いは否定できない。
 
 もうひとつは、3歳後輩にあたるスーパー名牝・ジェンティルドンナの存在である。2000~10年代は「牝馬の時代」と言われるほど、牡馬と互角以上の戦いを繰り広げる牝馬が続出した。04年生まれのウオッカとダイワスカーレット、そしてジェンティルドンナ(09年生)が、その代表的な馬たちだ。なかでも日本ダービーを制し、牡牝混合GⅠを7勝したウオッカ。牝馬クラシック三冠に加え、史上初のジャパンカップ連覇を果たすなどGⅠレース7勝を誇るジェンティルドンナは、やはり突出している。

 これらが先に顕彰馬に選出されてしまうと、ブエナビスタはいかにも不利だ。そしてその後、GⅠレース9勝というモンスター級の活躍を見せるアーモンドアイが殿堂入りしたことにより、今後ブエナビスタが顕彰馬に選出される可能性はとても低くなったと言っていいだろう。

 大変に惜しいことだが、リアルタイムで彼女の走りに接してきた私たちにとって、ブエナビスタが別格の存在であることは厳然とした事実。その鮮烈なインパクトを埋もれさせないためにも、本稿で取り上げようと思う。
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