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【名馬列伝】ハーツクライ、ゼンノロブロイら牡馬勢をねじ伏せ39年ぶりの偉業を果たしたスイープトウショウ。名門牧場の底力を示した個性派名牝の生涯

三好達彦

2024.06.15

GⅠ3勝を挙げたスイープトウショウ。05年の宝塚記念では39年ぶりの偉業を果たした。写真:産経新聞社

GⅠ3勝を挙げたスイープトウショウ。05年の宝塚記念では39年ぶりの偉業を果たした。写真:産経新聞社

 GⅠレース3勝を挙げながら、静かに忘れ去られようとしている1頭の名牝がいる。2004年の秋華賞、05年の宝塚記念、エリザベス女王杯などを制したスイープトウショウがその馬だ。

 スイープトウショウが生まれたトウショウ牧場は、フジタ工業(現「フジタ」)の副社長で、のちに参院議員となる藤田正明が開いた競走馬の生産牧場。その名は藤田の姓名からひと文字ずつ取り、「藤」(トウ)と「正」(ショウ)を組み合わせて「トウショウ」牧場と名付けられたものだ。

 藤田は知人に勧められて購買したアラブの「トウショウ」で重賞のアラブ王冠を制し、以来、深く競馬に深くコミットするようになる。北海道・静内町の奥深い原野を開墾して牧場の開場にまで至ったことが、その熱意の深さを示している。牧場を開場し、ブリーディングオーナー(和製英語では「オーナーブリーダー」と呼ばれる)となってから、所有馬の名には「トウショウ」の冠号が用いられた。
 
 トウショウ牧場を開くにあたって、藤田は牧場の基礎牝馬とするに足る馬を米国で購買、輸入する。名をソシアルバターフライというその牝馬は当時のリーディングサイアー、テスコボーイと交配され、のちにその美しく華麗な馬体とフォームから「天馬」と呼ばれるトウショウボーイを産む。

 トウショウボーイは皐月賞、有馬記念、宝塚記念などを制し、種牡馬入りしてからは三冠馬ミスターシービーなど数々の重賞勝ち馬を出して大成功。一気にトウショウ牧場の名を高め、同時に母ソシアルバターフライの名を広めることになった。彼女は生涯に4頭の重賞勝ち馬を送り出し、藤田の思惑通りに牧場の基礎牝馬となり、その血脈に連なる馬たちは「ソシアルバターフライ系」と呼ばれ、日本を代表する名牝系となった。

 トウショウボーイが種牡馬入りしてからトウショウ牧場は積極的に彼を種付けしたが、
なかなか活躍馬が現れなかった。しかし牧場が所有する日本在来の名牝系である「シラオキ系」に連なるコーニストウショウ(父ダンディルート)がついに牧場最良の産駒、のちに桜花賞馬となるシスタートウショウを生み出した。ちなみに、ダンディルートも藤田が輸入したフランス産種牡馬である。

 その後、トウショウ牧場はソシアルバターフライ系の血に拘りすぎるあまり、血統の更新が遅れるなど、成績は次第に下降していくのだが、やはりトウショウ牧場が守った「セヴァイン系」から久々に活躍馬が生まれる。父にエンドスウィープを持つ牝馬、スイープトウショウである。
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