競馬

日本の“レジェンド”武豊がアルリファーと11度目の凱旋門賞へ。唯一の日本馬シンエンペラーの前に立ちふさがる海外強豪馬の実力は?

三好達彦

2024.10.05

自身11度目の凱旋門賞に臨む武豊。日本人史上初の戴冠に期待がかかる。(C) Getty Images

 第89代ダービー馬ドウデュースで知られる松島正昭オーナーが、「武豊騎手で凱旋門賞を勝つことが夢」という目標を達成するため、今年も秋に入って有力馬に出資(共同所有)。日本が誇るレジェンド・ジョッキーに有力な騎乗馬を用意した。

 武豊騎手が10月6日の凱旋門賞(仏G1、ロンシャン・芝2400m)で騎乗を予定するアルリファーはフランス産の4歳牡馬(愛・J.オブライエン厩舎)。父のウートンバセットはアイルランドの名門、クールモアスタッドの繋養種牡馬のなかで最高の種付料である15万ユーロ(約2400万円)を誇る(2022年実績)。

 本馬は2歳時にヴィセントオブライエンナショナルステークス(愛G1、カラ・芝1400m)を制している。その後は勝ち鞍に恵まれないが、7月のエクリプスステークス(英G1、サンダウン・芝1990m)で、今年の英ダービー馬シティオブトロイに1馬身差の2着に健闘。復活の狼煙を上げると、8月のベルリン大賞(独G1、ホッペガルテン・芝2400m)で2着に5馬身差を付ける圧勝を飾った。ちなみに凱旋門賞へ臨んだベルリン大賞の勝ち馬としては、2021年のトルカータータッソ、22年のアルピニスタが勝利を挙げており、両レースの相性の良さは証明済み。また、距離を延ばすごとに成績を上げてきた距離適性の面からも推せる存在だ。

 1994年の初騎乗(ホワイトマズル、6着)から30年、武豊騎手は今回で11回目の凱旋門賞騎乗となる。アルリファーが制したベルリン大賞の結果を受けて、「レース内容も結果も素晴らしかった」と、本番へ向けて期待値のボルテージも上がってきた様子だ。シンエンペラー(牡3歳/栗東・矢作芳人厩舎)とライバル関係になるのは日本の競馬ファンにとって悩ましいところではあるが、日本のリビングレジェンドが悲願の凱旋門賞制覇に手の届きそうな駿馬で参戦できる喜びを素直に享受したい。
 
 超大物はいないが、高レベルで粒揃い。これが今年の欧州有力馬の前評判だ。

 9月15日に行なわれた3歳重賞・ニエル賞(仏G2、ロンシャン・芝2400m)に出走した2頭、ソジー(牡3歳/仏・A.ファーブル厩舎)と、ルックドゥヴェガ(牡3歳/仏・C&Y.レルネール厩舎)が人気を集めている。

 欧州の主要ブックメーカーで1番人気に推されているのが、ニエル賞を勝ったソジーだ(オッズ5.0~6.5倍)。仏ダービー(G1、シャンティイ・芝2100m)は3着にとどまったが、次走のパリ大賞(仏G1、ロンシャン・芝2400m)で初のビッグタイトルを奪取した。ニエル賞では、仏ダービーを制したルックドゥヴェガを3着に降して優勝し、一気に評価を上げた。凱旋門賞と同じ舞台であるロンシャンの2400mを2戦2勝とし、馬場の悪化が避けられないと伝えられるなか、重馬場で3勝しているのも強調材料。シンエンペラーにとっては最強の敵となる。

 前出のルックドゥヴェガは、主要ブックメーカーでソジーに次ぐ2番手の評価(オッズ6.0~7.0倍)。デビュー戦となった昨年11月の未勝利戦を勝ち上がると、いったん休養に入り、今年5月の条件戦にも勝利した。キャリアわずか3戦目に臨んだ仏ダービーも中団から徐々に位置を押し上げ、直線で鋭く抜け出して優勝し、無敗でダービー馬の座に輝いた。

 前走のニエル賞では逃げる形になり、直後でマークしていたソジーに差され、自身は3着となる。それでも約3か月の休養明けで、押し出されるように逃げて、差し馬のターゲットになったことを考慮すれば、まだキャリアわずか4戦での伸びしろの大きさも含めて、巻き返しても不思議はない。馬券的にこちらもスルーできない存在である。
NEXT
PAGE
不気味なのは愛ダービー馬。仏牝馬限定GⅠ馬にも警戒